「娘だと思われてるがそれでいい」高齢者を支えるボランティアの“犬散歩”チーム
福岡出身なので、うどん好きだ。タモリいわく、歯がなくても食べられるのが博多うどん。噛まずに飲める。最近しみじみと博多うどんの優しさが舌に、胸にしみる。「コシのないうどんなんてうどんじゃない」と四国出身者に言われたが、讃岐うどんはまだ若くてとんがっている感じかな。博多うどんには高齢者に優しいマークをつけてやりたい。「柔麺(やわめん)で」と注文すれば、かなりツウです。
<登場人物プロフィール>
千葉 秀子(61)ボランティアの助け合い団体代表。首都圏郊外で夫と犬と暮らす。娘家族が近くに住んでいる
吉田 チエ子(80)夫を10年前に亡くし、愛犬サスケと暮らしている
■会員の愛犬の散歩を365日休みなしで請け負う
千葉さんの1日は、犬の散歩に始まり、犬の散歩で終わる。それも1日3回だ。犬を7匹飼っているらしい坂上忍よりは少ない……かもしれないが、車で15分ほど離れたところに住む吉田さんの犬の散歩が含まれているのだから、散歩にかける時間は坂上忍よりも長いだろう。いや、坂上忍のことはどうでもいい。千葉さんが吉田さんの愛犬の散歩をしているのは、決して犬の散歩屋さんを生業としているからではない。といってもタダでやっているわけでもない。ボランティア価格と言っていいだろう。1回1,000円。一般的な散歩屋さんの半額だ。
千葉さんは有償ボランティア団体「ひまわり会」の代表を務めている。主に高齢者や産前産後のお母さんなどを対象に、家事などを提供する助け合い団体だ。高齢者の場合、介護認定を受けていない人の家事サービスや、介護認定を受けていても介護保険が使えない家事サービス――庭の草むしりや話し相手、犬の散歩などがそれにあたる――を、安価に提供するのだ。メンバーは8人。ほとんどがアラカン世代だ。
「みんなまだ自分の親の介護や、孫の世話などで忙しい年代ですよ。でも、これから自分たちが年を取っていくと、周りの人のお世話になることになるでしょう。そうなる前に、誰かの役に立っておきたい、って気持ちだと思います。ここはそれほど都会でもありませんが、昔ながらの地縁でつながっている土地でもありません。だからこそ、たまたま近くに住んでいるもの同士、助け合って行けたらいいと思うんです」
立派すぎる。しかし、大らかに笑う千葉さんを見ていると、いかにもボランティアをしているという気負いはなく、当たり前のことをやっているだけという雰囲気が伝わってくる。偉そうなところもない、どこにでもいそうな気のいいおばちゃんだ。それがこういう活動を続けられる秘訣なのかもしれない。
「そうね、無理はしないようにしています。無理しても続かないからね。犬の散歩も、絶対自分が毎日やると決めているとつらくなる。なんといっても365日だから。雨の日も雪の日も、台風が来ていても。お正月もありません。だから5人の犬チームをつくって、みんなで対応しているんですよ」