マクロビパーティーの“仕切りベジ”なる傲慢女に感じた、野菜でも脱臭できない臭みの元
つい否定的な文章を書いてしまうのは、私が肉を愛する人種だからだが、一通り食べ終えた今、マクロビに対して優しい気持ちになっていた。単純に「おいしかったから」というのあるが、主催者側も参加者側も「おいしい☆」と感動するだけの場だったのがうれしかったのだ。もっと「食肉dis」や「白砂糖は悪魔のクスリ」なんて主張を聞くのかと思っていた。お子さんが小麦粉アレルギーで、お母さんもヴィーガン(ベジタリアンよりさらに条件が厳しい)になって、あれこれメニュー を考えているなんて話を聞くと、見立て料理にもほっこりした気持ちになれた。会の途中で料理人男子を呼び止めてお話を聞いたのだが、「菜食になってから性格が穏やかになった」らしい。そういえば会場の空気も優しさに満ちている。料理にはしゃぎ、豪華な家具に「キレイ☆」とはしゃぐ女子たちは幸せそうだ。 「穏やかな農耕民族には野菜が性に合うのかなあ」なんて思っていたところへ、お客の1人である異質な女子が目についた。
別に見た目はフツーの娘さんだ。むしろ美人と言えるくらい整っている。だが、イベントの要所要所で「ん?」という発言をするのが目立っていた。私は時々、トークイベントに参加させていただくので、質問コーナーなどで発言してくださる積極的なお客さんが、ありがたい存在であることは心底わかっている。でも 時々いませんか? 「何で今その話を?」って発言をする方。場違いなのに自信満々な方。その異質女子もそんな空気を醸し出していた。どうやらこの手のイベントの常連さんらしく、「私、詳しいんです☆」って発言が随所で発動される。そんな彼女を見て「野菜じゃ無理だったか……」と思った。野菜ソムリエの資格を取ろうと何も変わらない長谷川理恵のごとく、菜食主義であろう異質女子からは「素敵な私の意見をお裾分け☆」という傲慢オーラがギンギンに放たれていた。「業の深い女につける薬なし」なのだろうか…。
なんて他人事ではなかった。すかさず異質女子に「仕切りベジ」というあだ名をつけて笑い合っている我々の意地の悪さも、野菜では変えることができなかった。なんせ素敵メニューをいただきながら、我々が話していたのは「森進一のアイスバケツチャレンジの映像見た!?」とか「マロ(あゆの元カレ)が農園を始めたみたいだね☆」とか下世話な話題オンリー。我々も相当に傲慢なオーラを放っていたかもしれない。しかし、仕切りベジと我々の違うところは「マクロビの場で、あえての下世話」を秘めやかに楽しみ合っているところである。場をわきまえ、己の業の深さを自覚しているのである。まだ若い仕切りベジも、己の傲慢さを自覚できればよいのだけれど、周りが指摘しづらい貫禄があるからなー……。世間的には立派な中年である私も、すでに若者からは指摘しづらい存在になっていることだろうから気をつけよう。おかわりのパンケーキ(追いパンケーキ)を頬張りながら、固く決意したマクロビランチパーティーであった。
大久保ニュー(おおくぼ・にゅー)
1970年東京都出身。漫画家。ゲイの男の子たちの恋愛や友情、女の赤裸々な本音を描いた作品を発表。著書に『坊や良い子だキスさせて1』(テラ出版)、『東京の男の子』(魚喃キリコ、安彦麻理絵共著/太田出版)などがある。
・HP ・ブログ ・Twitter