イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

“朴訥男子”然とした佇まいで山田太一脚本にハマった、俳優・東出昌大の鮮烈さ

2014/09/22 15:00

■演技力以上に武器となる佇まい

 その後、高村と泰子は再び会うのだが、気持ちが盛り上がり一夜を共にする。家に帰ってきた祐介は、パンツ一丁の高村を目撃。「ママのベットに男がいたら息子は頭が真っ白になるのさ」という高村に対し、「いえ、そこまで子どもじゃありません」と、祐介は2人の関係を受け入れるのだが、そのしゃべり方自体が、めちゃくちゃ“坊や”っぽいのだから、実に周到である。

 元々、ファッションモデルだった東出は、映画『桐島、部活やめるってよ』で、何でも器用にこなすが自分には何にもないことに悩むリア充高校生を演じて以降、注目を浴び、朝ドラ『ごちそうさん』(NHK)で杏の夫役の西門悠太郎を演じて、一気に人気俳優となったのだが、キャリアの短さもあってか、役者としての評価は決して高いわけではない。

 しかし、東出には演技力を補って余りある朴訥男子特有の、ぼんやりとした天然のかわいらしさがある。綾野剛のようなクール系イケメン俳優や、神木隆之介のような繊細な少年性がウリの俳優は層が厚いが、朴訥としたしゃべり方と佇まいが絵になり、周りを幸せにしてくれるオーラを漂わせているのは東出昌大だけだろう。個人的には90年代に活躍した筒井道隆以来の逸材だと思う。

 『岸辺のアルバム』や『ふぞろいの林檎たち』(ともにTBS系)を筆頭に60年代から傑作ドラマを書き続けているレジェンド脚本家のため、若い方の中には、山田太一作品は敷居が高く、食わず嫌いの方も多いかもしれない。しかし、今回の10人の脚本家の中で、実は一番説教臭さがなく、見てるだけでニヤニヤしてしまうような友達以上BL未満の関係を会話劇でぬけぬけと描いてしまうのだから、山田太一恐るべしである。
(成馬零一)


最終更新:2014/09/22 15:00
『acteur(アクチュール) 2014年3月号 No.40』
これぞ全方位モテ男子