芸能
イケメンドラマ特捜部【ジャニーズ&イケメン俳優】

“朴訥男子”然とした佇まいで山田太一脚本にハマった、俳優・東出昌大の鮮烈さ

2014/09/22 15:00
『おやじの背中』公式サイトより

 TBS日曜劇場で放送されていた『おやじの背中』は「10人の脚本家と10組の名優が贈る10の物語」をテーマにした、1話完結のオムニバス・ドラマだ。

 参加した脚本家は、岡田惠和、坂元裕二、倉本聰、鎌田敏夫、木皿泉、橋部敦子、山田太一、池端俊策、井上由美子、三谷幸喜。「父親」というテーマに対し、日本を代表するそうそうたる顔ぶれの脚本家が執筆し、毎回見応えのある短編が堪能できた。作品としては坂元裕二の『ウェディング・マッチ』、木皿泉の『ドブコ』などが印象的だったが、イケメンドラマ好きとしては、山田太一の『よろしくな。息子』が、ちょっとした問題作だった。

 物語は深夜のコンビニで中年女性・桂(柴田理恵)が強盗事件を起こす場面から始まる。コンビニ店員の戸川祐介(東出昌大)は、中年女性を冷静に説得して、事件は事なきを得る。それを見ていた紳士靴の職人・高村浩司(渡辺謙)は、祐介の見事な振る舞いに感動し、後日、店員を行きつけのラーメン屋に呼び寄せる。実は高村は祐介のことをあらかじめ知っていた。祐介は高村がお見合いした戸川泰子(余貴美子)の息子で、交際を断られた高村は、勢いで息子の姿を見に来ていたのだ。そして、祐介の人柄に惚れた高村は、靴職人の弟子入りをして自分の仕事を継いでくれないかと持ちかける。

■周囲を受け入れる朴訥男子としての魅力

 放送前は、女優の杏と付き合っているとウワサされる東出昌大と、杏の父親である渡辺謙の共演が話題となっていた本作だが、終わってみると東出と渡辺がイチャイチャしてる姿ばかりが印象に残る不思議なドラマだった。一番モヤモヤするのは、年の離れた男同士がお互いを褒め合うシチュエーションが延々と続くところだ。女性同士に比べて男同士は、仕事以外でお互いを褒めることが、どうにも苦手だ。それだけに、このシチュエーションは見ていて思わずニヤニヤしてしまうのだが、一方で妙に居心地が悪い。

 高村は、遠慮しながらも、必死に祐介との距離を詰めようとしてくるのだが、すぐに靴のうんちくをしゃべってはキモがられるという、自分の中にあるオタク気質を嫌悪しているのが見ていてわかる。しかし一方で、こんなキモい俺のことをわかってほしいという気持ちがダダ漏れで、俺ってキモい? 俺ってキモい? というような雰囲気で返答に困る質問をしながらも距離をジワジワと距離を詰めていき、いつの間にか靴を脱がし、東出の素足のツボを押し始めるのだ。

 高村の言葉は、遠慮がちで弱々しいのに、目だけはギラついており、絶対コイツを俺のものにしてやるという心情が渦巻いている。そんな高村を演じる渡辺が素晴らしいのは言うまでもないことだが、高村の全てを受け入れる東出の朴訥とした佇まいが実にかわいい。

 祐介は、ある事情で会社を辞めて、今はコンビニでアルバイトをしている青年として描かれるのだが、母親のことをずっと「ママ」と呼んでいる。これは、物語上では深い意味はないのだが、見ているとじわじわ効いてくる。山田太一は、脚本に書いた台詞を一言一句変えさせないことで有名だ。誰が演じても不器用そうに言葉を選んでしゃべっているような、独自のよそよそしさが演技に出るのは、そのあたりに理由がある。おそらく、母親のことを「ママ」と呼ばせることにも何らかの意図があるのだろう。

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