[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」9月22日号

「消えろ! あんたの役目は終わった!」、定年夫を持つ「婦人公論」妻たちの本音

2014/09/21 16:00

 まずは恒例の読者アンケート。「妻の嘆き大公開! 勤めに出なくなった夫、ココがわずらわしい」を見てみましょう。タイトルオチの感がじわり……。「定年退職した夫にストレスを感じる?」には87.2%の妻が「はい」。「一日中見張られているようだ」「買い物に行って、店員を怒る。彼女はあなたの部下じゃないのよ」「私の老後の趣味(ダンス、読書、韓流ドラマ)を全て嫌がっている」など生々しいご意見が並んでいます。

 「この先の夫婦関係、どうしたい?」という質問には、「改善したい」が43.6%、「もう諦めた」が同じく43.6%、そして「消えてほしい」が12.8%。コメントを見てみると「月に一度でいい。1時間でもいい。外に出てもらうべく画策中」という努力虚しく夫はなにも変わらず、「私は私で、夫は夫。これからもお互い好き勝手していきたい。とくに仲良くなりたいとは思わない」と諦め、それがやがて「消えろ! あんたの役目は終わった!」という流れになっているようです。「定年夫にひとこと言うなら?」に並ぶ「私を自由にさせて。かまわないで。いろいろ詮索しないで」「静かにしてください!」「嫁は家来ではない」に昭和の家父長制度を生きてきた60代、70代妻たちの心の叫びが溢れていて、ページをそっと閉じたくなりました。しかしそこに妻たちも加担してきたというのもまた事実……。          

■夫の呼び方に表れる妻のスタンス

 どうして「定年夫」はストレスの元凶になってしまうのか。その一因として考えられるのが「妻がギリギリまで耐えてしまう」。家でゴロゴロ、妻を部下扱い……その予兆は定年前の生活に表れているというのが、「我慢強い主婦が陥る『主人在宅ストレス症候群』とは」というページ。この病気を罹患しやすい“ハイリスク夫婦”の特徴を取り上げています。ちなみに「主人在宅ストレス症候群」とは原因不明のめまいや胃痛、手足のしびれなどに襲われるという心的要素の高い病気。コワイ!!

 「妻にとってストレス源になりやすい夫の特徴」として挙げられているのが、「『男は仕事、女は家事育児』『妻は夫を支えるもの』という価値観が染み付いている『亭主関白』世代」で、これは「若くても同じ価値観を持っていればハイリスク」の模様。性質の悪いことにこのような夫は自分が妻にストレスをかけているなど微塵にも感じていないことがほとんどで、「全く分かってくれない」という事実が妻をさらに苦しめるという悪循環になっているよう。


 その被害者たる妻にもまったく責任がないわけではなく、「生真面目な『良妻賢母』タイプ」や「『主人の言うことに逆らってはいけない』と考える『メイド妻』」は、ストレス源たる夫をまさに“陰から支えて”しまっていると、医学博士の黒川順夫先生は語っています。特に「夫のことを『主人』と呼ぶ人には、症状が表れやすい傾向があるのです」とのこと。

 確かに夫の呼び方――お父さん、パパ、主人、亭主にダンナなど――なにげなく呼んでいるその呼び名に、妻のスタンスが表れていますよね。呼び名がその人を作るというのもまた然り。主人在宅ストレスを感じ始めてる貴女、「主人が」とか「ダンナが」とか「パパさんが」とか呼んでいませんか? 今日から思い切って夫を「おい配偶者」とか「ねえ子どもの養育者」など、フラットな呼び名に変えてみてはいかがでしょうか。

 「別れない理由は“家庭内別居”にあり」と、定年夫との生活にやり直しはないと断言する「婦人公論」。しかし毎度のことですが、特集の最後を「おひとりさまの老後は、天国? 地獄?」というおひとりさまの過酷な現実をつづった読者体験手記で締めくくっており、別れたがりな奥様たちにアイスバケツをぶっかけていました。女50~60代、どちらにしても茨の道。かこさとし先生の願った「多様な社会」の実現には、まだまだ時間がかかりそうです。
(西澤千央)

最終更新:2014/09/21 16:00
婦人公論 2014年 9/22号 [雑誌]
婦人公論読者なりのツンデレだから!