カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「ar」9月号

感情を解き放って「自分が満足状態にあること」=モテだと促す、「ar」の残酷さ

2014/09/07 16:00

 と、やたらと感情の解放を勧めています。「笑ったり、泣いたり、あくびしたり、スネてみたり」という女性、社会に出たら、はっきり言って迷惑なんですよね。しかも、“自分の感情にフタをしない女の子”と、“いつもゴキゲンな女の子”は矛盾しています。“いつもゴキゲンな女の子”は、心に渦巻くドス黒い感情にフタをして、一生懸命ゴキゲンを装っているだけなんですよ。

 これらの文章を読んで筆者の頭に浮かんだのは、映画『ベティ・ブルー』のようなファム・ファタル系女子。「ar」では、6月号で「おフェロなフレンチ娘in early summer」、7月号で「フレンチ娘の(妄想)バカンス計画」といった企画を組んでいるので、多少“フレンチ娘”を意識しているのは確かなよう。ただ、日本の湿度と人口密度の中では、ファム・ファタル女子は暑苦しいだけなので、妄想の中で楽しんでいただければ幸いです。

■自己完結女は本当にモテるのか?

 と、オバサン丸出しの意見をしてしまいましたが、基本的に他人の話に聞く耳もたなさそうなところが「ar」ガールのいいところでもあります。「モテる光を味方につけたいの キラキラ女子でいくっ!!!」という企画では、艶と輝きのあるメイク法を紹介。そこでヘアメイクアーティストのイガリシノブ氏がモデルの矢野未希子(通称みっこ)を相手に次のように語っていました。

「キラキラしたオーラを持ってる女の子って、単に光りモノを身につけてるっていうより、ライフスタイルも充実して、心身共にヘルシーな人が多い気がする。仕事を一生懸命やって、限られた時間でエステに行ったりトレーニングしたり。夜もダラダラ飲んだりせず、楽しい時間を過ごしたらパッと帰る。時間をムダにしていないところも、キラキラ輝いた人に見せる秘密だと思うな。みっこちゃんはそういう生活をしてる人の代表!」

 ファッション同様、他人に合わせるとか、他人のためにどうこうするということは一切考えない。とことん自己完結主義です。“自分が満足状態にあること”=“輝くこと”だと信じているし、自分が輝いていれば他人は後から付いてくると信じている。まー、好きにすればいいんですが、そのまま年を取ったときにどうなるのか、老婆心ながら心配になりました。

 泣いたり、あくびしたり、スネたりして、キラキラしたオーラを持つ40代女子。残念ながら、日本は若い女性に甘く、年を取った女性に厳しい。「ar」が提唱する女子像が「カワイイ」として成り立つのは、若いうちだけというのが現実です。「ar」読者はおのずとそのことに気づき、どこかの時期に“他人(男や女性同士の同調圧力)”と折り合いをつけて行くのでしょうか。あるいはそのまま突っ走るのか、はたまた我が道を行くように見せかけて能年ちゃんのようにうまく気を回していくことになるのか……気になるところであります。
(亀井百合子)

最終更新:2015/11/26 23:58
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