「主人に跨るなんて死んでもイヤ」アラフィフ主婦が、それでも浮気相手を捨てた理由
■浮気相手は“飛び道具”でしかない
とはいえ、彼とのセックスは「主人とは比べ物にならないほどいい」と綾子さんはいう。
「外でのセックスは夢の中にいるようですよ! ラブホテルだから大声で喘ぐこともできるし、主人とは体験できないことも楽しめましたから。……例えば、おもちゃを使ったりとか、シックスナインしたりとか。お互いに『セックスを楽しむための関係』って暗黙の了解があるから、大胆なこともできたんですよね。主人の顔の上に跨るなんて死んでもイヤですし(笑)、そもそも自宅セックスほど難しいものはない、って思いますよ。うちにはトイプードルが2匹いるんです。あの無垢な瞳を向けられたら、素っ裸で股開く気にはなれませんよ」
性に淡白なご主人を持つ女性は多い。彼女たちが不満を感じているのは、性的に満たされない不満よりも、「セックスの対象」として、「女」として見られていないことなのではと、私は思う。綾子さんに、「別れたばかりの彼との関係は、婚外恋愛でしたか? それとも不倫でしたか?」と、いつもの質問を投げ掛けてみた。
「その時は大好きでしたけど……どちらでもなかったかなと、今では思います。確かに彼と会うのは楽しかったですよ。いつもLINEでつながって、毎日『愛してるよ』なんて言い合っていましたから。でも今の生活が壊れそうになったら、あっさりと関係を断ち切ってしまった。その行為に何の罪悪感もなかったし、彼も数回私に連絡をくれましたが、結局自然消滅しちゃいましたから。今振り返ると、『こんなもんだった』って思いますね。主人に求められない自分を好きになるための、飛び道具のようにしか考えていなかったのかもしれません」
そんな綾子さんだが、今でもたまに「女」の自分が疼いてしまうという。
「出会い系に登録しようかな、と考えてしまう時もありますよ。でも我慢しています。主人が私の携帯を操作していた時の恐ろしさを、今でも覚えていますから。フィットネスクラブの顔馴染みたちとのランチの時間や、ワイドショーを見ながらのお昼寝、犬たちのお洋服を作って知人の店のレンタルボックスに置いてもらう……そんな夫と結婚していることで得られる、自分の時間がなくなってしまうくらいなら、やっぱり女なんて捨てられます」
最初、あっさり彼氏を振ってしまった綾子さんに「なぜ?」という気持ちが強かった。しかし、彼女が「旦那さんに女として見られていない悲しみ」から彼氏を作ったことを知り、納得できた。「一番身近にいる男にだけは、一生女として求めてもらいたい」という願望に、共感する人は少なくないのではないだろうか。けれど、「女なんて捨てられます」と語る綾子さんを見て、彼女が本当に求めているものは、家庭の中で生き続ける“女”という存在なのかもしれないと思った。
(文・イラスト/いしいのりえ)