カルチャー
“モテ”から読み解く女性誌カルチャー【後編】

「CanCam」ブームのアンチだった20代後半女性が、いま“女性誌難民”と化した理由

2014/09/07 19:00
【左】「CanCam」2014年10月号(小学館)【右】「mina」2014年10月号(主婦の友社)

(前編はこちら)

■「CanCam」的価値観が支配するコミュニティ

 「KERA」などの雑誌を愛読していたファッションマイノリティ女子ですが、大学では肩透かしを食らいます。2005~07年頃は、「めちゃモテ」というキーワードを考案した「CanCam」(小学館)の全盛期。同誌の発行部数は80万部近くまで伸び、看板モデルの「エビちゃん」が社会現象となっていました。ツインニットに“ふわ揺れスカート”、ミュール。キャンパスには、「CanCam」から飛び出てきたような女の子があふれていました。

 似たようなところでは、「ViVi」(講談社)や「Popteen」(角川春樹事務所)系のギャルもいたように思います。今でこそ「Popteen」は中学生も読む雑誌ですが、06~07年頃は益若つばさがカリスマ的な人気を誇っており、大学生の読者もいたのです。それ以外の同級生は、だいたい「PS」(小学館)や「JILLE」(双葉社)「Soup.」(ジャック・メディア)のような、ゆるカジファッション。

 ティーンの頃、あれほどあこがれた原宿ストリート系の個性派はマイノリティでした。男子から熱い視線を集めていたのは、もちろんエビちゃん系とギャル系。この「モテ」が支配する空間で、大学生活を送るのか?

 そうなると、かつてのV系女子は、もはやゴスロリ姿で歩く勇気はありませんでした。せっかく大学生になって「ファッションの自由」を得たのに、モテ系女子が支配するその光景を見て、完全にヒヨったのです。ゴスロリなどのファッションはもう、卒業せざるを得ない。なぜなら人目が気になるから。大学生活をエンジョイしたいし、サークルに入って友達も欲しい。あわよくば恋人も……。こうした「異性を含め、幅広い層に好かれたい」という欲望は、「CanCam」の「全方位モテ」を彷彿とさせます。ファッションマイノリティ女子は「アンチモテ」だったはずなのに、いや、だからこそ、モテの呪縛から逃れられなかったのです。

■モテと個性の狭間の「mina」という選択肢

 それでも「ファッションマイノリティ女子」は、皆が皆同じ服を着ている「CanCam」一派の軍門に下るのはイヤでした。悩んだ末に、手に取ったのが「mina」(主婦の友社)です。当時の「mina」には、モデルの田中美保や比留川游らがいました。彼女たちの体形はほどには細すぎず、ファッションも適度にカジュアルで真似しやすい。柄物のシャツにオーバーオールや、丸襟ブラウスにボーイフレンドデニムなど、透かしてみれば、中高時代に読みふけった「KERA」や「CUTiE」「Zipper」の残像も見えるような気がします。「これなら許されるよね……?」それはかつて、「人とは違う個性派ファッション」を追求していた自分への「昔の私、ごめん。私は人目を気にして『mina』系カジュアルに走るよ……」という言い訳でした。

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