「婦人公論」つちやかおりの独占手記も霞む、上沼恵美子の定年夫観察記!
独占告白「芸能界復帰、別居―私の覚悟に夫は気づかなかった」では、離婚後の方がかえって連絡を取り合っているなど円満離婚を強調しつつも、フックンに苦しめられ続けた過去をズラズラっと羅列。さらに「離婚を考えた直接的な原因もあるにはあります。そのことについては敏和さんとの話し合いの席でハッキリと彼に伝えました。でもそれは夫婦のことなので、公にするつもりはありません」と、自分の手繋ぎ報道よりも決定的な事件があったこと、そしてそれは限りなくフックン側の問題であることも示唆。「あの人が悪いんじゃないんです」と言いながら、“絶対絶対あの人が悪い”と思わせる客観的事実を積み上げていくこの手法はまさに「婦人公論」独占手記といったところですが、思わせぶりなつちやかおりにどれだけの需要があるのかは甚だ疑問。
その点、上沼恵美子の「定年夫と暮らして決意、これからは本音を言わしてもらいます」はそれはもう清々しいばかりに夫への不満をぶちまけています。極度の「ええ格好しい」で「きっと夫は私に負けたくない。常に自分のほうが上なんだと言いたい、思いたい」という夫が定年を迎え、長い時間を一緒に過ごすようになるうちに「イライラして『ジャーン!』と頭のなかで小さなシンバルが鳴るようになりました」という上沼。イライラさせる夫の描写がなんとも詳細で鋭いのです。
例えば、本当はカツ丼が食べたいくせに「『にしんそば』みたいに通が好みそうなものを格好つけて注文しようとする」夫に対し、「『パパ。にしんそばでは絶対足りないって。ほら、おいしそうなカツ丼があるじゃない。これにしときません?』と、彼が内心食べたいと思っているものを見越して勧めます。するともったいつけて、『まぁキミがそう言うなら』と受け入れる」など、まるで読者体験手記を読んでいるかのよう。別れる/別れないの境界線にあえて踏み留まり、「大好きだった彼がこれからまたどう変わっていくのか、隣でじっくり観察させてもらおと思っています」というこのいけずっぷり、さすが関西バラエティの女帝です。“私らしく生きていきたい”とゆるふわに語るつちやがなんとも青臭く見えてしまい、この並びも「婦人公論」のイジワル。
いや、もしかしたら「婦人公論」は、夫婦というものに絶望の果ての希望を見出し始めたのかもしれない……。修復不可能だと思われた夫婦仲を改善させた秘策を集めた「ホンネ集 わが家の夫婦再生の秘密兵器」なども、今まであまり見られなかった企画。別れる不自由、別れない自由。その辺りの複雑怪奇な面白さは「婦人公論」が一番よく知っているところですから。
(西澤千央)