サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ官能小説家が語る「セックスを書く私」 カルチャー うかみ綾乃インタビュー 「男はバカ」と悟った初体験、不倫同棲、父との確執――官能小説家が明かす「セックスを書く私」 2014/06/14 19:00 インタビューうかみ綾乃贖罪の聖女 ――壮絶な経験ですね。 うかみ しかも相手も、私との生活が行き詰まったせいで、だんだん仕事をしなくなってしまったんです。そうすると、子どもの学費も払えなくなってしまって……だから私が、彼の家に毎月お金を払っていました。総額は言えませんけど、マンションは軽く買えるくらいかな。最終的にその男性は、ストーカー化したんですが、次に好きになったのは、その相談をしていた男性でした。でも晴れて付き合い始めたら、その男にもまたお金を取られるという……(笑)。こっそり私のカードでキャッシングしてたんですよ! でもそんなことも、今では「まあいっか」と思っています。 ――ちなみに、うかみさんの最初の男というのは……? うかみ 20代の時に最初に付き合った彼ですね。手をつなぐのも、キスするのも、セックスするのも、全部1日で済ませました。初めての時は、ただ痛いだけで、「痛い」と小声でつぶやいたら相手は「イク」と勘違いしてしまって、喜んでたんです(笑)。その時、「男ってこんな単純なことで喜ぶんだ」「男って可愛いくらいバカだな」と感じました。 『贖罪の聖女』のセックスシーンも重量感のある読み応え ――うかみさんのセックス描写は、「肉と肉のぶつかり合い」という言葉が似合うなぁと思っていたんですが、意外にもあっさりした感想なので驚きです。作品では、女性作家にありがちな“心理描写だけ”でなく、きっちりセックスシーンも書いていますよね。 うかみ 私自身は、そこまでセックスに重きを置いていませんよ。あんまり気持ちいいセックスをしたことがないんです。じゃあ、なぜ私が官能小説を書いているかというと、セックスに対してネガティブな気持ちを大切にしたいから。誰もがセックスをしたいわけでも、感じるわけでも、イケるわけでもありませんよね。人によっては、コンプレックスや自分の根源である嫌な部分が性に詰まっているし。それを、書くことで救いたい、読者と共有したいという思いもあります。 ――うかみさんにとって、どういうセックスが理想的なんでしょうか? うかみ セックスって、バカになって無になる行為だと思うんです。現実逃避かと思われるかもしれませんが、その逆で、セックスによって現実をつかみたい。普段の生活では、この男と付き合っていかなければいけないとか、やりたくない仕事もしなければいけないとか、本音を隠していますが、そういうもの全てを取り払って、素の自分になるのが、セックスだと思っています。そこまで裸になれる相手と出会うのは、なかなか難しいですけどね。 ――零士もそうでしたが、うかみさんの作品には、無邪気で純粋な男性キャラクターがよく登場します。 うかみ それは父親の影響でしょうね。父は、私を殴る人だったので、理不尽な暴力に対する恐れが染み付いているから、純粋な男性を書いてしまうんだと思います。父は、自分の娘である私のことをすごく溺愛していたけれど、私が父の考える「娘」の枠から外れると潰しにかかってきました。 でも今では父とは仲良しですし、実は私の理想のタイプは父親なんです(笑)。暴力を振るう父は大嫌いでしたけど、社会的に地位がありましたし、人から慕われるタイプなんです。なんでも自分で切り開いていくような行動力もあり、私に対してもそれを「すごいだろ」と自慢していました。そのせいで、父を素晴らしい男性と洗脳されてしまったのでしょうが、いまだに、父より優れた男性に出会ったことはありません。 前のページ123次のページ Amazon 『贖罪の聖女』 関連記事 真のヤリマンこそ純潔である――『聖娼の島』が投げかけるセックスの意味愛する者を守るときのむき出しの本能? 『姉の愉悦』のインモラルな世界ビジネスとしての展望は? 作家・宮木あや子が語る、女性が感じる官能小説「ブスを笑いたい」「乱暴にせまられたい」、酒井順子が女の欲望を読み解く生活か、セックスか。結婚を控えた女のやるせない渇望を描く『よるのふくらみ』