カルチャー
[連載]マンガ・日本メイ作劇場第36回

おデブ“だから”イケメンに愛される!?  『ぽちゃまに』に見る、努力を捨てたヒロイン像

2014/06/14 16:00
『ぽちゃまに1』(白泉社)

――西暦を確認したくなるほど時代錯誤なセリフ、常識というハードルを優雅に飛び越えた設定、凡人を置いてけぼりにするトリッキーなストーリー展開。少女マンガ史にさんぜんと輝く「迷」作を、ひもといていきます。

 女の願望はわがままだ。何の努力もしないで認められたい。美人じゃなくても、女らしくなくても、心がキレイだったり、正義感にあふれているから魅力的でしょ? 外見じゃなくて中身を見てよね。そんな私を理解して許容してくれる男子こそ、やっぱりイケメンよね~、と。

 前回紹介した、イケメンでできのいい大学生・田之倉(敬称略)と、33歳実家住まいの平凡な女・花笑が付き合うという設定で、世の中の疲れた女たちを痺れさせている『きょうは会社休みます。』(集英社)も、そんなわがままな女の願望をかなえるような作品だった。どうして田之倉が10以上も年上の面倒くさそうな女をわざわざ選んだのか、よくわからない。わからないけど、「読者が読んでいて気持ちがいい」から、それでいいのだろう。それが少女マンガというものだ。

 今回の作品『ぽちゃまに』(白泉社)は、ものすごく端的に言うと、おデブな紬とデブ専イケメンの田上くんが、学校でお互いほんのり欲情し合う話である。おデブであることが少々コンプレックスで、「彼氏なんかできないわ」と思っていた紬が、自称「ぽっちゃりマニア」の田上くんからまさかの告白をされ、付き合うことになる。付き合ってからは、脂肪に包まれ柔らかくてあったかい紬に触りたくて仕方がない田上くんと、モミモミされたい紬が、ほのぼのと学校でいちゃつき合っている。この話の趣旨は明快だ。「自分がコンプレックスに思っていることも、他人から見たら魅力かもしれないよ」ってこと。だけど、何かモヤモヤするんだよな。

 少女マンガの登場人物では、たまにものすごい当て馬脇役が名言を吐くことがある。若い金持ちの男が、施設からあどけない少女を引き取ってきて、おもちゃにしながら育てるという『禁断』(小学館)でもそうだった。中学生の萌子に悪戯しまくってる保護者の男に対して、クラスメートの男子が「この変態が!」と叫ぶシーンがあるのだが、いやはやその通り! といった具合に。

 『ぽちゃまに』でも、田上くんに片思いをする女子が、紬にヤキモチを焼いて、「大した努力もしないで、先輩なんて、ただ太ってるだけじゃない」と言う。いやホント、まさにその通りなんだよな。世の中には、病気や薬の副作用でふくよかになってしまう人もいる。それは責められることではない。太ったままがいいとか、太りたいというのなら、それもでもいい。だけど紬は、ダイエットしようとしたけど、「食べることが大好きで」断念したという。なんか……それってものすごく……ダメな理由だよね……。

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