「まるで結婚用の男」手ぬぐい洗顔の安定感と地味さに感じた、女たちの葛藤
美しくなりたい――世の女たちの狂おしい思いを、「43歳、ゲイ、汚部屋に一人暮らし」の漫画家・大久保ニューが担ぎ込む! 古今東西あらゆる美容法に食らいつき、美を追い求める女の情念まで引きずり出す――
初めて「手ぬぐいで顔を洗うと、肌がツルツルになる」というウワサを聞いたのは、去年のことだった。『美肌の習慣 手ぬぐい洗顔』(日本文芸社)という本を読んだ友人が実践してみたところ、とても良かったらしく、昂奮気味に私に勧めてきた。「本当にツルッツルになるんだよ☆」と言われて、試さない手はない。友人いわく「オーガニックコットンのサラシを使うのが一番いいよ☆」というが、結構お高い(8mで4,000円くらい)。友人から1mほど分けてもらい、本も読まずに実践してみることにした。
しかし、だ。いざ顔を洗おうとしてみると、すごく怖い。サラシって、わりとゴワゴワなのだ。これで顔を洗うのかと思うと、アトピー持ちの私にとっては、かなり勇気がいる。「オーガニックコットン」という“天然女”心をくすぐりまくるアイテムだというのに、手が震えてしまう。結局、洗顔はパスして、普通に体を洗うタオルとして使った。しばらく使っていたけれど、特に効果を感じることもなく季節は流れ、今年の春。担当編集のJ子より「手ぬぐい洗顔を体験してみませんか?」との提案が来た。「私と手ぬぐいには、何か特別な縁があるのかもしれない……」強引にスピ女心を盛り上げて、トライしてみたよ!
後日、J子から『「キレイ」が変わる 美肌手ぬぐい』(竹書房)という本が送られてきた。前述の『手ぬぐい洗顔』の著者・高邊しおりさんの新刊である。高邊さんは「手ぬぐい美容家」という肩書らしい。4月には高邊さん監修の石けんも発売になったようだ。かなりグイグイと迫ってくる野心を感じる。やはり天然生活系のシンプル女子なのかと思いきや、著者近影のお写真は、意外にもセレブ系だった。「美容界の坂本冬美」と言いたくなるような、マイクを持ったら『紅白』のステージに上がれそうな盛りっぷり。グイグイ! この上り調子感には素直にあやかりたくなるね☆
しかししかし、付録に付いている手ぬぐいを手にすると、またも気持ちが挫けてしまう。目の細かい上質な手ぬぐいらしいが、やはり顔を洗うには硬すぎない? 思わず躊躇してしまったが、本を詳しく読んでみると「使用する前に『水洗い』→『乾かす』を2回ほど繰り返す」とある。そして柔らかくなった手ぬぐいでクリーミーな泡を作り「泡を滑らせるように優しく洗顔」するらしい。なるほど、これを知らなかったから怖かったんだ。「ローションなしのア●ルセックス」みたいなことをしようとしていた自分を恥じ、本の通りに準備をしてみた。3回「水洗い」→「乾かす」を繰り返した手ぬぐいは、だいぶ柔らかな触り心地になった。さあ、喪失する準備はできたよ☆