ますだおかだ・岡田圭右が奇跡的に引き出した、徹子の「エジプトのラクダの思い出」
“芸人キラー徹子”。こう呼ばれるようになってから、もう何年もたった。一発ギャグや「何か面白いこと」を強いられた芸人が、「…………(無言)」「わかりました」、または「面白いと思います」というリアクションを徹子に取られて爆死・撃沈するパターンが多い。さらに、声が大きいと、「元気のよろしい」で片付けられちゃったりすることもある。
ますだおかだ・岡田圭右は、そんな意味ではお手本のような存在の芸人なのかもしれない。一発ギャグ、すべり芸、そして大きい声。なにより、ノリが明るいので打たれっぱなしでも悲惨な空気にならないところがいい。そんなますだおかだがゲストで訪れた、4月29日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)では、オープニングでいきなり、「岡田さんは、声の大変大きい方でいらっしゃいますが」と、やっぱり大声を強調する徹子。これに対して、「ウーーーワオ!」と全力でギャグを披露。「あのー……なんかびっくりした」と、ギャグではなく声の大きさに注目する徹子もさすがだ。
「本当に元気なお二人」
と、やはり、大声は「元気」で処理される。しかしこの岡田の大声が災いし、『世界ふしぎ発見!』(TBS系)で共演する際に、回答者席が端と端にされるようになったと徹子が語る。というのも、「『ワーオ!』って言うたんびにね、もうね、思考力がなくなっちゃって」。それは仕方ない。さて、「ちょっと面白いことやっていただきたいんですけど」と唐突に「本題」が振られた。相方の増田英彦が、「うちの相方の干支ギャグを」というと、徹子は「もうね……いいですけど……やって」。ギャグを始める前に、すでに撃沈ムードだ。それでも、岡田は干支ギャグに挑む。一発ギャグ芸人の鑑だ。
「ンニョロ! ニョロリンパ!」(岡田)
「……ほう……ちょっと長くなったんですね。“ニョロ”よりはね」(徹子)
なんだか冷静に分析されている。続けて午年のギャグ。
「…………バ!」
ためてからの、「バ!」。この拍子抜け具合が意外とウケちゃったのか、無言で口を押さえて笑いをかみころす徹子。
「バ! これですね、“バ!”です」
ここぞとばかりに岡田もかぶせるが、
「エジプトの砂漠で、ラクダが鳴いたところ聞いたんですけど」
徹子が話を切り替えてきた。
「……ボワァ~」
徹子がラクダのものまねを出してきた。岡田の「バ!」が、ラクダを誘発してしまったらしい。「ボァ~」連発。「変わってないなぁと思ってさ」、岡田のギャグを聞きながら遠いエジプトに思いをめぐらせていたのだった。
岡田とのやり取りは、ある意味安心して楽しめる想定内のものだが、相方・増田もじわじわと追いつめていくのが、徹子の恐ろしさだ。前回出演時には、「できると思ってさ」と、マッチと瀬川瑛子などのものまねををやらされ、コンビそろって惨敗したわけだが、今回も「じゃ、新ネタ」と、やはりものまねを強いられた。しかし、増田も徹子に挑むかのように、『ザ・ベストテン』世代だからベストテン歌手なら誰でもできると、徹子に逆ムチャぶりをする。すると徹子のオーダーはいきなり、「松田聖子!」。
「♪あーーわたーーしいのこーーいわぁ」
正直、微妙な感じではある。しかし、徹子は「ああ、でも似てる」「メロディ、おんなじ」。似てるって、そこなのか。続いて、「ローラースケート乗ってらした、アレできるでしょ」と、光GENJIをリクエスト。「♪いわないで~いわないで~」と、返すもやっぱり、「メロディは大体そんなもんでした」とメロディの正しさで評価。続いて福山雅治、サザンオールスターズとやった後で、田原俊彦で「抱きしめてTONIGHT」を披露。すると今度は、
「……ンフフフフそういう歌あったっけ?」
メロディが合ってるかどうかすらも判定されなくなった。「はい、学園ドラマの……主題歌……」、増田の説明が空しく響く。さらに増田のものまね地獄は続き、動物ものまねをひとしきりやらされた後で、「アタシのまねってできます?」と振られた。
「……こんにちは、黒柳徹子でございます」
…………シーン。もう一度、
「黒柳徹子でございます。イッ!」
「イッ!」ってこれ、鳳啓助じゃないか。「イッ、クロヤナギテツコデゴザイマス、イッ!」と、「イッ!」を連発する増田に、「……アタシ、『イッイッ』って言ってるの?」と徹子が問う。しまいには、「ワタクシクロヤナギテツコデゴザイマス、イッ! イッ! ッテ、ソンナコトワタクシイッテオリマセンデスヨ」と、増田がマネした“鳳啓助ふうしゃべりの徹子”を演じる徹子。
イッ! イッ! ……ニョロ! そして、ボワァ~。混沌とした奇声だらけの30分でした。
(太田サトル)