90年代伝説のレディース総長が読み解く、『ヤカラブ』の現代ヤンキー少女の恋とセックス
紫の特攻服で、バイクで駆け抜けた青春
――すえこさん自身は、そう感じたことはなかった?
中村 よく当時の友達とも話をするんですが、私たちの時代って「男がイクためのセックス」ばっかりで、多分、自分にとって気持ちのいいセックスはできてなかったんだなぁと思います。セックスに関しては「自分より、男」だったのかもしれない。
もちろんそこには、「男がそういうセックスしかしてこなかった」というのと、私もそれしか知らなかったというのもあると思います。相手が好きだから、相手がセックスして満足するのであれば、たとえ自分が満足できなくても、それはそれでうれしかったんです。でもやっぱり、『ヤカラブ』の子のように、セックスを「気持ちいいもの」として楽しむという感覚はありませんでした。
――『ヤカラブ』の少女たちには、誰よりも早く処女を捨てること、たくさんの男性とセックスをすること、そしてセックスを楽しむことに価値があるのかもしれませんね。
中村 確かに初めてセックスした後は、私も「これで自分も大人になったのか」とは思いました。だけど、ほかの子より「前に出る」って感覚ではなかったですね。セックスすることで周りと同じラインに立った感じ。
――すえこさんにとって「一歩進んでいること」とは何だったのでしょうか?
中村 『ヤカラブ』の子たちは、みんな彼のバイクの後ろに乗るんですよね。だけど私は後ろじゃなくて自分で運転したかったんですよ。やっぱり自分で運転するのと、後ろに乗るのとでは見える景色は違うから。多分それが、私の「誰よりも先に一歩進みたい」っていうやつだったのかも。『ヤカラブ』の彼女たちが誰よりも先に進むために、セックスをしたり、可愛くオシャレであろうとするように。私にとっては、それが最高にオシャレなことだったんですよ。そういう意味では、「誰よりも先に一歩進みたい」というのは、今も昔も、ヤンキー少女の変わらないところかもしれませんね。
(取材・文/西澤千央)
中村すえこ(なかむら・すえこ)
1975年埼玉県生まれ。13歳でレディース紫優嬢に入り、15歳で四代目総長に。テレビや雑誌に取り上げられ、ヤンキーのカリスマとして圧倒的な人気を誇る。現在は、少年院などを慰問しながら、非行少年少女たちの更生に力を入れている。四児の母。著書に『紫の青春 ~恋と喧嘩と特攻服~』(ミリオン出版)がある。
『ヤカラブ』 鈴木有李著
「SOUL SISTER」(ミリオン出版)連載当時から、大反響を巻き起こしていた“現代ヤンキー少女”の恋愛ストーリーをまとめた1冊。「彼氏と入れたイレズミ」「14歳の不倫」「クラブでの男狩り」「暴走族との恋」といった、彼女たちのリアルな物語には、全国の女子高生を中心に感動の声が多く寄せられている。