「nina’s」ママの意識の高さと相性のいい、本物のダメパパ鈴木拓
とあるミュージシャンママの1日が紹介されておりますが、昼間「お出かけはお弁当と水筒を持参」し、「掃除はほうきとちりとりで」済まし、「玉ねぎの皮やお茶で染めて雑貨を」手づくり。夜は信頼できるところからお取り寄せした「無農薬野菜を丸ごと食べる」、その後の「お皿洗いは純せっけん」で。その他クリエイティブママたちから「洗濯板を使う」「大根の皮を干して煮物に」「お掃除は重曹とクエン酸で」「4月と10月に手前味噌を仕込む」など、「おばあちゃんな暮らし」のアイデアが出るわ出るわ。極めつけに「布ナプキンを使う」まで。ちなみに大正生まれのうちのばあちゃん、「こんないいもの(紙ナプキン)があるなら、もう1回メンスがきてもいい……」とよく言っていますよ。節約生活を「おばあちゃんな暮らし」と名乗りだしたオシャレママたち。洗濯機がないから洗濯板を使っていたという当たり前の史実ですら、オシャレの名の下ではぐんにゃりと捻じ曲げられていくのでした。
■「nina’s」ママにぴったりの鈴木拓
「nina’s」ママたちがおばちゃんを飛び越えておばあちゃん化しているのなら、その夫たちはどうなのでしょう。連載がついに次回最終回を迎える「田村亮のパパ日記 子の背中を見て親は育つ」では、パパ仲間であるドランクドラゴン・鈴木拓、タレントのつるの剛士を迎え、3人でパパトークを繰り広げております。田村いわく「自分みたいなダメパパがいると思って欲しくて始めた連載」だそうですが、まぁこういう場合の「ダメパパ」「ダメママ」が本当にダメであったためしがなく、「ダメ、ぐうたら、ズボラ」を自称する人ほど自らの育児に対してプライドが高かったりするので本当に厄介です。
話はそれましたがこのパパトーク、自称ダメパパ田村と、世のイクメン代表・つるのが“ママにはできない、オレたちなりの傷だらけ育児”を語る傍らで、本物のダメパパ鈴木がボソッと本音をつぶやくという構成になっているよう。
つるの「僕も昔、番組で『おバカ』って言われてたことがあって、それって仕事的には愛情じゃないですか。でも息子が友達に『パパのことバカって言わないで』って泣いてたのを見て、気を付けなきゃいけない部分もあるなって思いました」
田村「でもそれで飯食えてるわけだから難しいところやね。大きくなったときに、父ちゃんはこれで飯食わせてくれたんやって気づく瞬間があるんやろうけど」
鈴木「僕なんてすぐTwitterが炎上したり、クズとか言われたりするんだけど、それがあるからお前らが食べられるんだって言ってます。『炎上一回でお前のDSが買えるんだ』と」
同じラインで語られているのに、つるのの「おバカ」と鈴木の「クズ」の高低差たるや……。学校行事や地域活動には積極的に参加し、子どもたちも学校に来るパパをちょっと自慢に思っているというつるのに対し、嫁から「恥ずかしいから学校には絶対に来るな」と言われている鈴木。だから「バリバリに変装したり、カツラかぶったりして」行事に参加するそうです。「子どもと命がけのことやると達成感とか成長とか味わえますよ」と長男との登山エピソードを語るつるのに対し、せっかくシーカヤックを買ったのに子どもを誘うと「『今日はやめとく』ってすぐ言う」という鈴木。ダメパパこそが自分の役割と命じてパパトークに参加しているのでしょうが、あまりにもエピソードがリアルで胸を打ちます。
「僕はイクメンじゃなくて、奥さんを大事にしてる“オクメン”だって言ってるんですよ」というつるののキラーフレーズで締めくくられたこのパパトーク。育児名言マシーンと化したつるのより、実は鈴木の「家庭円満の秘訣は、パパはママの顔色をうかがって、ママはパパのことを見ないで子どもだけ見ているほうがいいんじゃないかと」という一言に真理が隠されているように感じました。節約だオシャレだエコだと言いながら洗濯板を抱えて川へ洗濯に向かう「nina’s」ばあさんを見送るのに一番しっくりくるのは、田村でもつるのでもなく、まさかの鈴木なのかもしれません。
(西澤千央)