“自称ブス”の自虐女・菜々緒が、「ビジネスブス」であること決定づけた瞬間
ここで湧き上がってくる疑問は、なぜ菜々緒は自分を「ブス」というのか、ということである。モデルは美人でスタイルの良い女性のみが就ける職業であり、菜々緒が今、芸能界で仕事ができているのは、美女だからである。
本人の心の中に理想とする姿があって、それと完全に一致していないが故にブスと発言しているのかもしれないが、それを口に出すことは、得策とは言い難い。上述した通り、共演者は明らかに困っていて、場は白けている。女性視聴者の好感度にも影響を与える。“美の富裕層”菜々緒が自分をブスということは、年収6,000万円の人が、「私って貧乏なの」と嘆くことと同じで、「あんた何言ってんの」と視聴者の女性から反感を買う可能性があるからだ。
しかし、菜々緒は本当に自分をブスと思っているのだろうか。それとも、仕事上、そういう発言をした方が目立つと考える、いわゆる「ビジネスブス」なのだろうか。
その答えは、大久保佳代子がMCを務める『イイ女の条件~極上美女対談~』(フジテレビ系)にて明らかになる。番組の初めに、大久保は自分と菜々緒を「合わない」とけん制し、菜々緒に「ナナクソ」という失礼なあだ名をつける。対して菜々緒は、「何を言われても大丈夫です」と笑顔で応じ、ほかのトーク番組で披露していたブスネタを、ここでは封印したのである。
思い返してみると、これまで菜々緒がブスネタを披露したバラエティ番組は、すべて司会が男性であった。(Twitterでの発言も、菊地ではなくバカリズムに向けられている)男性なら「そんなことないですよ」とブス発言を流してくれるが、自分を好意的に思っていない大久保の前では、関係性がさらに険悪になると踏んだのではないだろうか。この放送で、菜々緒がブスネタの代わりに披露したのは、恋人に浮気をされたエピソードと、25歳になったのでジムに通いだしたという、ブスとは別の種類の「自虐」。
こうした自虐発言の使い分けを見るに、菜々緒はやはりビジネスブスなのではないかと思う。
バカリズム、関ジャニ∞、NEWSらは菜々緒のブス発言に引いていたが、年配の男ほどそれを真に受けて、「謙虚でいい子」だと勘違いする傾向がある。権力者を落としたい時に、菜々緒のブス発言は有効なのかもしれない。まあ、同性に嫌われること請け合いだが。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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