膨らんだおなかを隠すな! 「VERY」の産前ランチ服に見る「ママ礼賛」思想
■「VERY」好調のワケは思想よりファッション!
「VERY」は昨今、売れ行きが好調といわれています。最近は、熱狂的な「VERY」ウォッチャーも増えて、特に後半の読み物ページを絶賛しているようです。
しかし、「VERY」世代の筆者からすると、「VERY」の読者が増えているのは、やはりファッションページが「間違いない」からではないかと思います。読者が増えると広告が増えますが、最近は広告ページも、使えるコーディネートを紹介してくれるし、特集ページでも、今、押さえておくべき流行のポイントを詳細に解説してくれています。
今月も、「春のオシャレはウエスト“位置”で決まる」というページがありました。「ウエスト位置ってそんなに大切なの?」と思う人もいるかもしれませんが、去年あたりから、短めのトップスがはやったり、逆にハイウエストのペンシルスカートも出てきたりと、オシャレな女性たちにとっては、ウエスト位置に悩まされる日々が続いているのです。そんな最新の悩みを、わかりやすく紐解いてくれるところも、「VERY」が人気の秘訣なのではないでしょうか。
■引き裂かれる母への価値観
先ほど、「母である」というアイデンティティが、「VERY」的にも社会的にも意義あることになってきたと書きましたが、そういう一大勢力が生まれると、同時にそこから漏れてしまった人が出てきます。今月号には、「NOKIDS VERY読者」という、母ではない読者に向けたページがありました。
そこには、「主人と過ごす時間を大切にしたい」「持病の偏頭痛と主人の手術が重なり……」「子供はいつかとは思いつつ、目先の仕事や二人の生活が充実していて……」「子供のいない専業主婦は肩身がせまい」などと、世間の「ママ礼賛」の空気にとまどっている女性たちの声が多数寄せられていました。
しかし、「VERY」は同時に「母になること」を礼賛しているじゃないですか! というツッコミは野暮なのでしょう。「VERY」とは、「ママ礼賛派」も、「ママ礼賛の風潮に乗れなかった人」も、両方を引き付ける「引き裂かれた」雑誌。称賛されるポジティブな思想は、同時にその裏で、そこに乗り切れなかった人たちを生んでいるということを、「VERY」は思い出させてくれます。
(芦沢芳子)