コラム
[連載]悪女の履歴書
「愛犬家連続殺人事件」――4人を殺害“透明”にした偽装夫婦、風間博子という女
2014/03/08 19:00
■物証なき中で博子の“犯罪”探し
一方、博子も死体運搬は認めたものの、事情は知らなかった、殺人や遺体解体には関与していないと起訴事実を全面否定したのだ。さらに関根は、博子こそが主犯で、山崎が殺人の実行犯だと主張するなど、お互いに罪を擦り付け合う展開になっていく。そして注目すべきは、山崎の法廷証言だ。
「警察で言われたのは、おれの証言で(博子は)死刑にもなるし、無罪にもなるし、際どい線だと。だから重要だ」
「物的証拠もなければ具体的な証拠というものはない。博子に関してはまったくないから、まぁおれの証言1つにかかっている。そういうふうに聞いています」
その上で、「私は、博子さんは無実だと思っています」との証言をしたのだ。事件には物証がない。唯一あるのは山崎の供述調書と状況証拠だけ。その山崎が「調書は検察の勝手な作文」「博子は無実だと思っている」というである。だが、2001年3月21日、浦和地裁が下した一審判決は死刑。博子は関根と共同で犯行に当たったと認定され、死刑判決が下された。その理由は、検察側が提出した「捜査段階での山崎の供述」を“真実”だと裁判所が全面的に支持したものだった(それ以前に山崎には死体遺棄で懲役3年の判決が確定している)。
その後博子と同じく死刑判決が出た関根は、共に控訴。控訴審でも山崎は同様に「博子の無罪証言」をしたが、判決は覆ることなく、東京高裁は控訴を棄却。そして09年6月5日、最高裁で博子と関根の死刑が確定した。
(後編につづく)
最終更新:2019/05/21 18:54