熊切あさ美に教えたい、田中将大投手の妻・里田まいの「沈黙する」という力
交際相手と結婚したいと願うのは当然のことだが、伝統の世界や、億単位を稼ぐスポーツ選手など、女性の社会的地位を明らかに押し上げる結婚の場合、相手の男性だけでなく、その周辺にも気を使う必要がある。ぺらぺらと内情を話すと、ただでさえいい印象を持っていない周辺に「出しゃばり」「野心家」「外堀を埋めて結婚しようとしている」と攻撃のチャンスを与えてしまい、「だからあの女はやめておけ」という結論を導いてしまうのだ。そして、こういう名門や高収入男性は、驚くほどの素直さで、親や周囲の言う事を聞き入れてしまうことを忘れてはならない。その点、やはり里田の「沈黙力」は目を見張るものがあったいうわけだ。
結婚後も、里田の「沈黙力」は発揮され続けている。「内助の功」を自認する女性たちは、口を開けば夫の話、また夫への過剰な感謝(○○してくれて、ありがとう、が代表例)ばかりを語るが、里田のブログにはマーくんは登場せず、暮らしぶりを自慢するかのような記述もない。浮ついたところが、まるでないのである。
ステイタスの高い男性との結婚は、独身女性の永遠のあこがれだろう。しかし、里田は教えてくれる。結婚とは我慢である、と。それは、夫のために自分を殺すという意味もあるが、もう1つ、自慢欲や愚痴欲を封印することを意味する。名門や稼ぎのいい男性には変わり者が多いので、予想外に傷つけられることもあるだろうが、悔しいことがあっても、独身時代のように、その愚痴を友達に漏らすことすらできない。なぜなら、夫婦の内情は他人にはわからないので、「あれだけ稼いでいるんだから、それくらい我慢しなよ」「嫌なら離婚すれば?」と嫉妬まじりで返されるのがオチだからだ。
全てを手に入れられる結婚はない。ステイタスの高い男と結婚し、我慢をしつつ、嫉妬を買わないように暮らすか、人にうらやましがられない男と結婚し、時に友達に愚痴をこぼして気楽に暮らすか。どちらが幸せかを決めるのは、もちろんあなた自身である。
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。
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