『僕のいた時間』に響く、日常の中で絶望を隠すように微笑む三浦春馬の切なさ

　おそらく作り手は、難病モノだからこそ、むやみやたらと情緒に訴えて視聴者を泣かそうとするのではなく、拓人たちの日常描写を、役者の芝居を通して丁寧に積み上げていこうと考えているのだろう。

　拓人以外の登場人物のドラマも豊かで、就職できなかった恵が、悩んだ末に介護の仕事に付く経緯や、守と陽菜が少しずつ恋仲となっていく姿、実は人付き合いが苦手な弟の陸人と拓人の微妙な関係、拓人の病気のことを知り、心配しながらも恵と付き合う先輩の向井繁之（斎藤工）など、脇役のエピソードも充実している。そのため、多部未華子、風間俊介、山本美月、斎藤工を筆頭に、それぞれの俳優陣にも、しっかりと見せ場が用意されている。

　だからこそ、この作品が難病モノではなく、『あすなろ白書』（フジテレビ系）のような大学生の青春ドラマだったらどんなに楽しかっただろうか、と何度も思った。もしかしたらあり得たかもしれない、そんな拓人たちの日々を想像してしまうこと自体、この作品にハマっているのかもしれない。

　病気と向き合うことを決めた拓人は、会社の同僚にALSのことを告白し、両親や友人にも本当のことを知らせる。一方、恵には病気のことを隠して、別れを告げる。後半戦となる6話以降は、病気が進行し車椅子生活となった拓人を恵たちがどう受け入れていくのか、という話になっていくのだろう。できれば、前半のトーンを維持したまま、最終話まで進んでほしい。
（成馬零一）