徹子に『仮面ライダー』変身をねだられた藤岡弘、が、純然たるヒーローのゆえん
藤岡弘、といえば、一流の俳優であると同時に一流の武道家でもある。求道者としての独自のこだわりはいろんな分野にわたって存在し、例えばコーヒーの入れ方ひとつとっても独自のスタイルがある。「スゥ~、ありがとう……ありがとう……スゥ~~」と、精一杯の感謝を込めながら一滴一滴落としていくスタイルを、テレビで披露している姿を時折見かける。
ワイルドかつ繊細、とでもいったらいいのだろうか、強いけど謙虚で、いつもニコニコ。「いい人」感がにじみ出ている。そんな藤岡弘、が出演した、1月23日の『徹子の部屋』(テレビ朝日系)。言うまでもなく高速おしゃべりな徹子と、朴訥で「……スゥ~」といった感じの藤岡。ある意味、真逆の組み合わせである。
「13年ぶりのご出演ということなんですけども。藤岡弘、さん。4回目のご出演なんです」(徹子)
「そうですねえ……」(弘、)
最近は、テレビ朝日の人気番組『ナニコレ珍百景』の探検隊企画の“隊長”としても活躍する藤岡。徹子も、「『ナニコレ珍百景』ってあの、アタシも大好きな番組でね!」とはしゃぐ。“徹子は『珍百景』好き”という新情報はともかく、これに対して「……そうですね、面白いですよね」と、弘、は収録時の苦労や秘話などを語るでもなく終了してしまった。でもニコニコ、いい人オーラは全開だ。予想はしていたが、やはりこの組み合わせは徹子がアレコレしゃべっては、「そうですねぇ」「ええ」「はい」「あぁ……」と、弘、が相槌を返すスタイルで進むようだ。
昨年に103歳で亡くなった弘、のお母さんの話になり、若い頃のお母さんに抱かれた赤ちゃん時代の弘、の写真が映った。
「実は遺影なんですよ、私の」
弘、が言った。小さい頃に肺炎で亡くなりかけ、その時に「遺影として写真を撮っておいた方がいい」と言われ撮影したものだとか。そっか……体が弱かったんだな、弘、。また、早くに亡くなったお父さんは警官であり、武道家であったといい、弘、のルーツ的存在だ。しかし、強いのはお母さんも同じで、90代の頃に泥棒を一喝し、撃退したこともあったという。また、2階にあるキッチンに行くため、晩年は両手をついて這うように階段を上がっていたそうで、
「見かねて私が行って、『お母さん、ちょっと背中に乗んなさい』ってやろうとしたら、ピシャアッって手をほどかれましてね」(弘、)
「確かに手を使って、足も使って上がっていくのは、身体にはいいと思いますよね、足だけでどんどん行くよりは。きっとね。全身使って」(徹子)
と、妙な納得をしている徹子。また、藤岡が何かで母に愚痴をこぼした時は、「『50~60の鼻垂れ小僧が何を言うんですか。もっともっと外に向かいなさい』なんて言われて、シュンとなってましたけど」。強い男・藤岡弘、も「鼻垂れ小僧」呼ばわりなんて、お母さん最強だ。
ところで、昨年末のゲストがタモリだった回では、タモリが居合二段を持っているという話からの、「真剣」に関する食いつきがすごかった。今回も、藤岡がかつて主演したハリウッド映画『SFソードキル』の撮影の合間に「サムライ」藤岡が、真剣斬りを披露したというエピソードを語ると、
「うわぁぁぁ……怖い」「でもそうするとやっぱり、殺陣やなんかやったりなんかしてらっしゃる時は、気をつけなきゃいけないですよね」「真剣をやったら怖いですものね」
と徹子。先日タモリが、あまりに徹子が「居合」「真剣」についてトンチンカンなことを言い続けるため「また別の時に話しましょう」といなしていたが、その説明、早めにしてあげた方がいいかもしれない。
さて、番組を見る前は、徹子が弘、に武道の型なんかを「やってくださらない?」とムチャブリする展開が見られると期待していたが、実はすでに過去の出演時にやったらしい。当時の映像で、弘、に「仮面ライダー」の変身を求める徹子が映し出された。
「どんなふうに変身って?」(徹子)
「……ハハハ」(弘、)
「ちょっと、どんな手つきだったのか、せっかくだから」(徹子)
「いや、ハハハ……こうしてね、こう回してね……ええ、どうだったかな?」(弘、)
そうしてようやくモジモジした感じに「変身!」した弘、。そんな当時のVTRを見て「……フフフフ、カワイイよね。すごいカワイイね」と、徹子は満足そうだ。「いやあ、照れ性だったんですよね。私、ずーっともう照れ屋で」と、弘、は語ったが現在の弘、もやっぱりモジモジしてた。
だが、3月公開予定の『仮面ライダー』シリーズ映画最新作で、久しぶりに仮面ライダー1号として出演する弘、は、往年と変わらぬ迫力の「変身」を、「平成ライダー」たちに見せつける。スイッチが入ると、モジモジ・ニコニコから一転、ビシッと決める。やっぱり、藤岡弘、はヒーローだ。
(太田サトル)