当事者が語る『ホットロード』時代

能年玲奈実写化で話題の『ホットロード』、ホンマモンの暴走族はこう読んだ! 

2014/01/13 15:00
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『ホットロード』(集英社)

 ドラマ『あまちゃん』(NHK)のヒロイン・能年玲奈主演の実写映画化が話題となっている『ホットロード』(集英社)。少女漫画ながら80年代の暴走族文化をも描き、当時は女子高生からガテン系の兄ちゃんにまで幅広く読まれていた作品だ。

 昭和47年生まれの筆者は、主人公の春山と同い年の時に漫画『ホットロード』と出会っている。世間一般では、その時代に『ホットロード』を夢中で読んだアラフォーを「ホットロード世代」と呼ぶらしい。そこで本レポートでは、関東の元暴走族で昭和47年~49年までに生まれた3世代を狭義の『ホットロード世代』として、この漫画をリアルタイムにどう読んでいたのかコメントを集めてみた。余談だが、この年の生まれは、ちょうど男の「後厄・本厄・前厄」に当たることを断っておきたい。

 さて、当の暴走族たちは、この少女漫画をどう読んでいたのだろうか。それぞれのコメントを紹介しよう。

「ちょうど15~16歳の頃に付き合っていたカノジョの家に置いてあったから、たまたま目を通したけど、そういうきっかけがなければ、ヤンキー少年が手に取ることはないタイプの漫画でしょう」(千葉・昭和49年生まれ)

「当人たちは嫌がるかもしれないけど、雰囲気としては横浜とか湘南とか、そっち方面の集会ってああいう感じだったかもしれない。実際、そこら辺を舞台にしてなかったっけ? 東京ではほとんど暴走族は廃れていたけど、埼玉、千葉あたりだと、まだコテコテのスタイルで軍隊みたいなチームが多かったからね」(東京・昭和47年生まれ)

 当時、暴走族の間では「ヨン・フォア(HONDA・CB400 FOUR )」の「ハルヤマ仕様」が流行するほど作品も話題となっていた。BEET社製テール・カウル、モリワキ・フォーサイト集合管、セパレーツ・ハンドル。ロケット・カウルに三段シート、竹槍マフラーといった定番の改造と一線を画したシックな乗りこなし。


「ハルヤマに憧れて『ヨン・フォア』に乗りたがったヤツは多かった(笑)。だけど、マトモに働いていないガキが乗れるバイクじゃなかったからね。当時で60~70万円はしたんじゃないかな。だから何度もかっぱらったことはある。ハルヤマ人気で『ヨン・フォア』の盗難被害は増えたかかもね」(神奈川・昭和49年生まれ)

「ちょうどあの頃って、コテコテの族車が廃れてきて、街乗り仕様で乗る連中が増えてきた。そういう時代背景にマッチしていたと思うけど、俺らはパンチパーマに特攻服っていうスタイルを崩さなかったんで、あんまり影響は受けなかったけど」(千葉・昭和48年生まれ)

「あのハルヤマの髪型、さらっさらのツンツン・ヘア。ああいう髪型にしたかったですけどね。15か16歳のうちから暴走族だったら、強制的にパンチパーマか坊主頭にさせられたから」(埼玉・昭和49年生まれ)

 暴走族文化にも変化が現れた80年代後半。わかりやすく言うなら、旧来の暴走族に影響を与えたミュージシャンが「永ちゃん」だとしたら、ホットロード世代は「チェッカーズ」。実際、藤井フミヤは『ホットロード』にインスパイアされて「Jim&Janeの伝説」(88)を作詞作曲している。さらに、この曲が実写版の主題歌に使われるという話もあり、主人公の春山洋志はどことなく若かりし藤井フミヤに似ていたりするのだ。

 能年ファンの中には、イマドキ暴走族映画――という声も多いようだ。だが、80年代はドラマにしろ漫画にしろ暴走族モノが絶大な人気を誇っていた時期である。『ホットロード』にしても、まるで『シド&ナンシー』のように無軌道に生きる若者の破滅的な恋愛ストーリーであり、この手の映画が少なくなった昨今だけに、今夏のロードショウが楽しみなところだ。


最終更新:2016/10/11 19:21
『ホットロード 1 (マーガレットコミックスDIGITAL)』
やべ、改造における定番とシックの違いわかんね……