カルチャー
[連載]マンガ・日本メイ作劇場第33回

感電、監禁、流血、脳みそ操作まで!? 少女マンガ『出口ゼロ』の異様な鬼畜度

2014/01/16 21:00

 この「D.A.アカデミー」は、芸能人になるための養成学校なのだ。日本の主な芸能人は皆この学校の卒業生なのだとか。いったん入学したら、家族とも一切連絡を取ってはならず、学校を出るときは退学になった時かデビューが決まった時だという。

 生徒たちは、入学するや即興演劇をやらされる。まずくじびきをして、引いた紙に書いてある役割が割り当てあられる。役柄が決まったら、指定された期間ずっとそのキャラを演じなければならない。少しでも役から逸脱した言動をすると、マイナスを付けられ、リミットに達したら退学だ。退学=薄ら笑いよだれ垂らしにさせられるということのようだから、みんな必死である。

 演劇漫画といえば『ガラスの仮面』(白泉社)が思い浮かぶ。確かに北島マヤも、四方八方からテニスボールを投げつけられたり、体中に竹をくくりつけられたり(そしてその竹が折れて腕に刺さったり)と、割と体張ったレッスンを受けていたので、演劇を学ぶというのは、命を捨てる覚悟が必要なんだなあ。

 『Wの悲劇』という映画では、薬師丸ひろ子が「顔はぶたないで! 私、女優なんだから!」と叫んでいたけど、「D.A.アカデミー」の生徒たちは即興劇中に頬をナイフで切られたり、髪を切られたり、殴る蹴るももちろん、そうとう生傷が絶えない感じである。卒業する頃には満身創痍だと思うけど、いいのかな、体に傷とか残っても。顔の傷を死守する薬師丸ひろ子と、傷も厭わない「D.A.アカデミー」の生徒たちと、どっちが女優魂があるのだろう。

 最近の『リミット』といい、スリル満点でダイナミックな少女漫画を放出している講談社。そういえば同じ講談社のお化け人気漫画『進撃の巨人』は、閉ざされた空間の中で若者たちが正体不明の敵と戦う物語だ。『出口ゼロ』も、全寮制の学校中で、生徒たちが恐ろしい形相をしたレディー・クイーンに立ち向かい、生徒同士も誰が味方なんだかもよくわからないし、校内に行方不明者もいるし、これはもう少女漫画版『進撃の巨人』だと思ってカップルで『進撃の巨人』と『出口ゼロ』を交換こして読めばいいんじゃないですかね。

■メイ作判定
名作:メイ作=1:9

和久井香菜子(わくい・かなこ)
ライター・イラストレーター、少女漫画研究家。『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)が好評発売中。ネットゲーム『養殖中華屋さん』の企画をはじめ、語学テキストやテニス雑誌、ビジネス本まで幅広いジャンルで書き散らす。街で見かけたおかしな英文から英語を学ぶ「Henglish」主宰。

最終更新:2014/04/01 11:13
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