コラム
角川慶子の「シロウトで保育園作りました」第56回

耳が聞こえなくなっても、緊張で吐きそうになっても我が子にお受験させる理由とは?

2013/12/21 16:00
お受験の発表には校内貼りだし、郵送、ネットがあり、親が一番ラクだったのはネットでした

 お受験戦争が落ち着いて、やっと日常を取り戻しました。保育園の保護者はこのコラムを読んでいるみたいで、「合格おめでとうございます。コラム読みました!」と声を掛けてくださることが多く、たいへんうれしいです(「合格おめでとう」よりコラムを読んでくれている事実がうれしいという意味)。読者の方には、私はお受験や保育園経営、タレント活動、ライター業……なんでもこなすへこたれない母親といった印象を持たれているかもしれませんが、受験はほんとにキツかったですよ。

 年中の夏に最初にお教室へ連れていったとき、我が子のできなさ加減にびっくりして卒倒。遅れを取り戻すために必死になりましたが、やり過ぎて子どもに負荷が掛かり、「受験やんない」と言われるのが怖く、さじ加減が大変でした。その頃、ストレスで耳管開放症という病気になり、耳が水の中にいるような潜水状態になってしまい、日常の会話も苦痛になっていました。耳が聞こえないせいで、自分の発音した声が変らしく、婿にも「今日は耳が聞こえないね」と言われる始末。それでも毎日仕事には行かないといけないし、具合が悪いことを悟られてはいけないと思い込んでいました。「耳が病気の人が経営する保育園なんて、安全でないと思われる。その原因がメンタルからくるものとなれば、なおさら……普通に話さなきゃ」と思い込むほど追い詰められていました。バカですよね。

 医者には「外科手術もあるけど、ほとんどはストレスが原因なので、そのストレスがなくなれば症状もなくなります」と言われていました。気づくと症状の出る日、出ない日が出てきて、あるときからほとんど出なくなりました。いま考えると、娘はペーパーがとても苦手だったので、ペーパーのある学校を志望校から外したことがきっかけのように思います。絵画と体操(指示行動)、行動観察に絞って志望校を決めると、模試の結果がびっくりするくらいよくなりました。そこから受験まで症状が治まったので、もう完治したのかもしれませんね。

 受験当日の子どもの体調管理はもちろん、自分自身の体調もおかしくなっちゃうのがお受験です。特にうちは受験8日前に娘が指を骨折するというあり得ないことがあったので、私自身ごはんが食べられない、眠れない状態で当日を迎えました。

 複数校を受けていたので、受験しながら順次合格発表があります。発表の仕方は学校によって異なり、貼り出し、ネット、速達郵送があります。親として一番キツかったのは、貼り出しでした。学校に着くまでに「うっ、吐きそう……」(笑)。自分の受験ならここまで緊張しないですよ。郵送は「封筒を開ける前から合否がわかる」と言われています。不合格は「不合格」の紙一枚に対し、合格者は入学金の納付書が入っていますから、厚みが違うのです。うちの場合、速達でしたが、届いた時間は保育園に顔を出していたため、郵便ポストに入っており、手に取るとすぐに「合格」とわかりました。なので、ネットと郵送はあまりストレスが掛からない発表方法でしたね。

■小学校受験と中高大受験が違うのは……

 私も含め、ここまで苦労しても小学校受験にこだわるのは、公立がよかったのは20年前の話だからです。公立小学校の教師をしている私の友だちは、お子さんを私立に通わせています。なぜなら、教師も親も変だからだそうです。みんながそういうわけではありませんが、たとえば、「好きな子どもには、漢字のハネがなくても○、嫌いな子どもには×」という採点をしていて、同じ教師として恥ずかしいのだといった具体例を聞き、ビックリしました。私が公立は嫌だと思ったのは、近所のスーパーで地元小学校の親子が買い物をしていて、子どもが騒ぐなどして公共のマナーが悪いのに、親が何も注意をしていなかったからです。その後も同じような光景を何度も見たため、娘の友人にはさせたくないと思いました。

 また、根底に、私自身の中学受験がつまらない思い出だったからということもあります。物覚えが悪かったせいで、週3塾、週2家庭教師。旅行にも行けず、挙げ句の果ては第1志望校に落ちてしまいました。もう、時間返せって感じ。小学校受験のメリットの1つに、暗記の中高大受験と違い、日ごろの成果が試される唯一の受験ということがあります。ズバリ、ふだんの子育てが反映されます。親の行動で合否が決まるといっても過言ではありません。最近は、中学受験をさせるために、環境のいい私立小学校を受験をさせる親が出てきましたね。公立だと中学受験に対する理解が浅く、雑音が多すぎるのかもしれません。

角川慶子(かどかわ・けいこ)
1973年、東京都生まれ。「角川春樹事務所」会長・角川春樹氏の長女。自身も元アイドルという異色の肩書きに加えて、ビジュアル系バンド好きで、元バンギャルの”鬼畜ライター”としても活躍。2011年9月1日に「駒沢の森こども園」をオープンさせる。家庭では5歳の愛娘の子育てに奮闘中。

最終更新:2013/12/25 22:53
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