カルチャー
[官能小説レビュー]

『ゆっくり 破って』から考える、「三十路の処女はいかに“破られる”べきか?」

2013/12/16 19:00

 世間的には、砂糖菓子のように甘くて表層的な恋愛観が理想とされ、それらを綴るドラマや漫画の数々は女たちを魅了している。しかし、こうしたメディアの影響を受け続けると、男性から自らを守る女の殻はどんどん肥大してしまう。特に、男性に触れられる日を夢見て、三十路まで処女を貫いた女たちの殻は、温い経験では決して破られないほどに分厚くなっているはずだ。そんな殻を破る瞬間への夢や憧れは、いつか捨てたくても捨てられないシコリになってしまう。理津子の処女喪失は、そんな煩わしさと執着を“悲哀”で断ち切ることができた瞬間だったのかもしれない。

 しかしそんな切実さの一方で、部下でもある年下の塩井に弄ばれながらも、従順に従い、淡い恋心を抱いてしまう理津子を見ると、まるで、子どもの頃に意地悪をされた同級生に対して、ほのかな好意を抱いてしまった時のような無垢な感情を思い起こさせる。女だったら誰しも少なからず「甘ったるい恋愛だけでは物足りない」「時には苦みや痛みが伴わなければ感じない」というマゾヒズムの精神を、潜在的に備えているのだと感じさせるのだ。優しくされるだけでは女の心は動かない。時にはちくりと刺すような痛みを与えてくれる男に強く惹かれてしまう。著者は、そんな女の秘密の願望を丸裸にするように、サディスティックな塩井という男性を描写したのではないだろうか。

 『ゆっくり 破って』というタイトルから、まるで「乙女系SM小説」という言葉を彷彿とさせる本作だが、同時に女の切実さや潜在的な願望といった深い多面性をも感じさせてくれる作品である。

最終更新:2013/12/16 19:00
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