「女は自分の人生を否定できない」白河桃子と宇野常寛が語る「女子カースト」
そして話題は、「女たちはなぜ連帯できないのか?」という本書の主題へ移る。宇野氏は“連帯”について、こう提案する。ワーキングマザーの問題を例に、「共働きの夫婦が子育てするなんて、はっきり言って不可能。だからもうあきらめて、『子どもは社会が育てるもの』とマインド・チェンジすべき」とした上で、「男性と連帯すべき」というのだ。「例えば、最近は出産後も女性に働いてほしいという男性は山ほどいる。そういった男性と連帯すればよい」と語り、またそういった団体を作って、政治家に「この団体を味方につけておけば、当選間違いない」と思わせることによって、新しいシステムを作っていくことが、ワーキングマザー問題の解決策とした。
こうした政治システムの構築で問題を解決しようとする宇野氏に対し、白河氏は「女性の政治嫌い」を指摘しつつも、「子どもを持つと、保育園などの問題が絡むので政治を身近に感じることになる。だからこそ選挙で意志表示を」と選挙の重要性を説いた。その一方で、女性の“生きづらさ”を複雑化する元凶は、女性の内面にあると語った。
「女性は自分の人生を否定できない」と、白河氏は言う。例えば、総合職として出産後も仕事を続ける女性は、最近の女子大生の専業主婦志向を「自分たちのやってきたことに意味はなかったのか」と嘆き、専業主婦は「自分の生き方を否定することになるから、娘に専業主婦になるなとは言えない」と言うそうだ。これはつまり、どんな選択をしても、女性には迷いがあり、あなたは正しいという肯定を欲しているということだろう。
一般的に女性は、共感力が高く、真面目で努力家だとされる。しかし、今回のテーマである「女子カースト」や、「自分の人生を認めてほしい」と願うのは、その性質が裏目に出て、少しでも違う人には共感できない、許せないという排他性につながっているように思えてならない。
「女子大生を納税女子に」つまり、これから社会に出る女子大生が結婚・出産後も働き続けることができる社会にすることが、白河氏の今後のミッションだそうだが、娘にとって、母親の一言が重要であることは珍しくない。「女子カースト」の根底にある「自分の人生を否定できない」という女性の思考、そしてそれを娘にぶつけてしまう母という意外な伏兵の存在に、この問題の複雑さを垣間見る思いがした。
(仁科友里)
【当日の様子はこちら】
「『格付けしあう女たち』刊行記念トークイベント」白河桃子×宇野常寛
(PLANETSチャンネル)