カルチャー
『格付けしあう女たち』刊行記念トークショーレポ

「女は自分の人生を否定できない」白河桃子と宇野常寛が語る「女子カースト」

2013/12/19 21:00
『格付けしあう女たち』/ポプラ社

 彼氏がいる子といない子なら、いない子は「下」? 正社員で独身のおしゃれな女性社員より、夫と子どもがいるパートの方が「上」?

 学校や職場など、同じ環境にいる女性同士で暗黙のうちに行われるこのような「格付け」や「上下関係」に悩んだ経験はないだろうか。いわゆる「女子カースト」といわれるものである。女子大生だろうと、独身OL、ママになろうと逃れられない「女子カースト」。そこに潜むのは「結局、社会的地位の高い男性に選ばれた方が勝ち」という昭和的価値観である。白河桃子氏の新著『格付けしあう女たち 「女子カースト」の実態』(ポプラ新書)は、その発生のメカニズムと、巻き込まれてしまった時の対処法についてつづられている。

 去る12月4日、ポプラ社コンベンションホールで開催された、新刊刊行記念トークイベントに参加してきた。白河氏と対談するのは、『ゼロ年代の想像力』(ハヤカワ文庫JA)などの著者であり、スクールカーストなどコミュニティの格差問題にも造詣が深い評論家・宇野常寛氏である。会場は満員で、「今回は男性読者も多い」という白河氏の発言どおり、少なからず男性の来場者を見かけた。

 白河氏は、本書執筆のきっかけを、「女性編集者による提案」と語った。少子化ジャーナリストで、経済産業省の女性政策委員として活躍する白河氏と、「女の格付け」問題は意外な取り合わせのように思える。しかし、女性有識者会議でなかなか意見が一致しない時に白河氏が抱いた「なぜ女同士はつながれないのか?」という疑問と、女性編集者の「なぜ女同士は格付けしあうのか?」という疑問は、表裏一体の関係であることに気付いたそうだ。

白河桃子氏(左)と宇野常寛氏(右)

 さて、実際に「女子カースト」とは、一体どういうものなのだろうか。白河氏は本書で、女子カーストが生まれる原因の1つを、「ヒマがある集団」と分析し、筆者は深く頷いた。筆者が十年前勤務していた大手企業では、「女子社員は職場の花」であり、仕事面での期待をされなかった。そのため、女性社員同士の格付けが激しく、彼氏の有無、勤務先はもちろん、社内の男性にどれだけモテるのか、誕生日やクリスマスに何を買ってもらったかというような競争が熾烈で、彼女たちと顔を合わせる昼休みが苦痛でならなかった。

 しかし、昼休みならせいぜい1時間程度の我慢で済むが、厄介なのはママカーストである。今回のトークショーでも、最もスポットが当たっていたのが、ママカースト問題だった。子どもが「人質」なので、自分が嫌だから付き合わないという選択肢はなく、夫のステータス、ワーキングママか専業主婦か、子どもの頭の良し悪し、生活レベルなど、どこかに違いがあるとうまくいかないし、同じであれば些細な差が格付けの種になる。

 このようなママカーストの悪循環にはまらないために、白河氏は「たくさんの足場を持つこと」を推奨。「子どもの運動会に嵐のツアーバッグを持って行ったところ、ほかのお母さんが駆け寄ってきて、『私もファンなの』と盛り上がり、気の許せる友達ができた」という具体的なエピソードを挙げ、「妻でも母でもない、自分だけの評価基準で楽しめる世界を作ること」が、ママカーストの深みにはまらない方法だと語った。

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