内博貴の大袈裟すぎる舞台演技が花開く、『天国の恋』というトンチキ世界
今回ツッコませていただくのは、話題の昼ドラ『天国の恋』(フジテレビ系)で、四十女のヒロイン・埴生斎(床嶋佳子)の初恋の人、さらに初恋の人と瓜二つの薦田潮を演じている内博貴。
ドラマの前半では、年下の万引き男で「非正規労働者」を演じるジャニーズJr.・高田翔の演技力が注目を集めていた。ボロボロの衣服やヒゲ面といった作り込みも含め、野良犬のような雰囲気を醸し出している達者な演技の高田に比べ、内は正直、微妙な存在に見えた。ところが、中盤から躍進し、今ドラマを一番面白くしているのが、内なのである。
ヒロインに「初恋の人の生まれ変わり」と考えられている葬儀社の息子を演じているのだが、一応エリート設定なのに、なんとも言えないボンクラ臭が見事にハマッている。ドラマの中で見せる内の大きな魅力の1つは、大袈裟すぎる、悪い意味での舞台演技だ。内のムダに艶っぽい容姿と透き通った声と、情感たっぷりすぎる演技が、『真珠夫人』『牡丹と薔薇』(同)などでおなじみの脚本家・中島丈博のトンチキ極まりないステキなセリフと調和して、この上ない非現実感を醸し出している。
さらに、ヒロインに愛を誓いつつも、ヒロインの妹に露骨な色仕掛けをされると、簡単に負けそうになる意志の弱さ、ダメっぷりも、清々しい。本当にダメな男だが、常に自分の気持ちに正直で、ピュアなのだ。そして、昼ドラに必要なのは、まさしくこうした「非現実感」や「エンタメ性」なんだと思う。どこまでもトンチキで、どこまでも胡散臭くて、現実には体験できない・したくもない刺激がいっぱい詰まった、奥様方のおとぎ話の世界に、内はピッタリすぎる人材だと思う。
演技が折角うまくても、事務所が安売りしないためか、個性が強いためか、主役しかやらせてもらえないジャニーズもいる。でも、へたな演技を存分に生かしてできる芝居というのも、実は結構ある。へたであればあるほど輝く仕事がある、そんな新しい可能性を内は示してくれているのではないだろうか。
ボンクラな婚約者、親のコネだけで生きてきた二代目社長、複数の女の間をいったりきたりするヒモ男など、内にハマりそうな役はたくさんある。良いなあ、内の可能性……。
(田幸和歌子)