『紅白』落選、連載終了……“事実上解散”のNYC、その悲運を振り返る
「NYCって誰?」「売れてないのに、なんで毎年紅白に出るの?」などの世間の冷たい反応が続出するのは、年末年始の「風物詩」となっていた。だが、今年はいよいよNYCが『NHK紅白歌合戦』に落選。今年はシングルリリースがなく、「Myojo」(集英社)のNYC連載も11月号からなくなり、「事実上の解散」とうわさされてきただけに、もともと予想されていた落選ではあった。ファンはガッカリした一方で、「これでようやく叩かれずにすむ」と少なからずホッとした面もあるだろう。
というのも、『紅白』に出続けることで「ゴリ押し」と言われ続けた彼らへの世間の風当たりは、決して弱いものではなかったからだ。もともと『紅白』に出られる実績などないのだから、落選は当たり前。でも、そもそもなぜ毎年「NYCって誰?」と言われ続けるような状況になってしまったのか。ジャニーズ事務所内でもほかに類を見ないNYCの「悲運」について、今あらためて振り返ってみたいと思う。
■結成への複雑な道のり
2009年6月に、ジャニーズJr.ユニット「B.I.Shadow」(現Sexy Zoneの中島健人&菊地風麿、Jr.の松村北斗、高地優吾)に中山優馬を加えた「中山優馬with B.I.Shadow」がCDデビュー。そこへ、同年9月、すでにデビューしていたHey!Say!JUMPの人気メンバー・山田涼介と知念侑李を加えて「NYCboys」になり、翌年3月には、優馬、山田、知念の3人だけのユニット「NYC」が結成された。
つまり、「ジャニーさんのスペオキ」優馬とJr.で一旦ユニットを作ってみたは良いが、物足りなくなり、「テコ入れ」としてデビュー組の人気メンバーを入れ、Jr.は不要になったということだろう。こうした経緯から、途中で切り捨てられたメンバーのファンから反感を買い、「人気メンバー2人が掛け持ちすることにより、本体の活動が少なくなる」ことから、Hey!Say!JUMPファンにもそっぽを向かれた。NYCは最初から「歓迎されないグループ」だったのだ。ジャニーさん1人を除いては。
■冷ややかな目で見られ続ける不遇
Hey!Say!JUMPのコンサート内で「NYC」コーナーになったり、中山が登場したりすると、露骨に座るファンもチラホラ。JUMPの輪に入れず、1人佇む優馬に、山田、知念が駆け寄る姿もたびたび見られた(JUMPの他メンバーがフレンドリーに話しかけてくれる微笑ましい場面も多々見られたが)。
■羞恥プレイの多さ
『紅白』では、「罰ゲームみたい」と言われる赤、青、黄色+股間がくっきり見える白のパツパツのパンツなどの衣装を着せられていた。また、与えられる楽曲も、途中からは、まったりした犬のワルツ「ワンダフル キューピット」や、法被を着て踊るお祭りソング「ハイナ!」など、セールスを考えているとは到底思えないものばかり。それでも恥じらうことなく、腐るでもなく、パツパツの破廉恥パンツでも、おかしな曲・振り付けでも、全力でキレキレに踊る3人組の姿はプロそのもので、「いじらしい」というファンの声も多かった。
■謎の活動~顔面偏差値・スキルの無駄使い
「ブサイクが1人もいない珍しいグループ」という声も多い。また、もともとダンスが正確で美しい知念、表現力抜群で人を惹きつける力のある山田に加え、ダンスも歌もぐんぐん力をつけてきた優馬。ただし、残念ながら、テレビなどの露出は少なく、コンサートも1度も行われていないため、披露する場がない。「ジョイポリス」限定曲など、リリースされていない未発表曲も数曲。「ワンダフル キューピット」リリース時には児童館「こどもの城」で親子限定イベントが行われたり、「ハイナ!」は親子を中心としたPV撮影があったりと、ターゲットはなぜか「子ども」だった。また、今年は「楽しい企画がある」と宣言し、コンサートが期待されたが、フタをあけてみたら、なぜか「写真集」発売のみ……。
■仲良くなってから引き裂く残酷さ
全員同い年のためか、ふわふわした緩い空気も独特。最初はよそよそしさもあったが、後に「知念・優馬が自由にボケまくり+山田1人が頑張ってツッコミまくり」の関係性ができてきた。優馬は山田を「仕事の相談が唯一できる人」「心の支え」と言い、知念を「心の癒やし」とも言い、また、優馬と山田はプライベートでも「2日に1回のペースで会っている」と雑誌やラジオで語っているほどの仲良しぶりだが、3人の仕事は一切ない。「事実上の解散」となっているのが現状だ。
それにしても、不祥事があったわけでもなく、何の発表もなく、「事実上の解散」となったグループはジャニーズ史上初だと思う。「ファンをバカにしている」という怒りの声の一方で、「まだあきらめていない」という声もあるが、そんなファンの思いが少しでもジャニーズ事務所に届いていると良いのだが……。
(田幸和歌子)