『クロコーチ』で怪演した渡部豪太に見つけた、「アブなくて怖い演技」の可能性
今回ツッコませていただくのは、10月18日放送分『クロコーチ』(TBS系)第2話で殺し屋を演じ、話題を独占した渡部豪太。
まず登場シーンから、金髪のヅラ+ド派手Tシャツ+警察官の帽子+ブリーフ姿。それだけで十分ヤバイのに、体毛を犯行現場に残さないために、眉毛まですべて剃り落とし、全裸で襲いかかる姿は、狂気に満ちていて、本当に恐ろしかった。
ネット上でも、「スキンヘッドの殺人鬼怖すぎだろ」「眉毛全剃りの俳優の全力っぷりやべえw」「スキンヘッドのヤツが怖すぎてトラウマ」などの声が続出していたほどだ。
正直、『クロコーチ』での怪演を見るまでは、彼がここまで演技のできる人だということを知らなかった人は多いことだろう。渡部豪太というと、『ホタルノヒカリ』『ヤスコとケンジ』(日本テレビ系)はじめ、さまざまなドラマに出演してきたものの、バラエティ番組やトーク番組に出る時の印象が強く、扱いは決まって「爽やかなイケメン」だった。
そもそもクセの強い天然パーマと、個性的な顔立ち、さらに驚いた時に目をくるくるさせたり、大きなリアクションをしてみせたりする素直さ・落ち着きのなさは、どちらかというと「イケメン俳優」というより「天然俳優」「個性派俳優」として売っていった方がよいのではないかという疑問もあった。
また、ルックスは人気女優・綾瀬はるかや、鹿に似ていることも、気になっていた。さらに、内面的には、カナダ留学経験がある割に(あるいは、カナダ留学経験があるからこそ、かもしれないが)、日本的なものを好み、どの番組に出ても熱心に「てぬぐいの魅力」ばかりを語る風変わりなところも、気になっていた。
このままいくと、まだ若いのに俳優ではなく、仏像の話ばかりするタレント・モデルの「はな」や、星空の話ばかりするシノラーみたいに、「てぬぐいタレント」になってしまうんじゃないかという心配もあった。
ところが、そんな余計な心配をよそに、今回、危険な殺し屋役によって、役者として開眼した渡部豪太。全裸+眉剃りの体当たり具合も素晴らしいが、あのアブなさを醸し出しているのは、鹿にも似ている「大きな黒目」なんじゃないかと思う。
肉食系の顔よりも、黒目の大きな草食系&小動物系の目って、おとなしく見えて、実は何を考えているかわかりにくいだけに、怖い役をやると、ハマることが案外あるものだ。渡部豪太の生かし方は、まさに「何を考えてるかわからない」ところにあったと思う。
そして、彼を見ながら、ふと妄想してしまった。渡部豪太に顔が似ている綾瀬はるかが、もし殺人鬼やアブない役をやったらどうだろう? と。あるいは、『あまちゃん』(NHK)アキ役でブレイクした小動物系女優・能年玲奈も、渡辺えりが『あさイチ』(同)の「プレミアムトーク」に出演した際、「リスの目みたいに黒目が大きくて、何を考えてるかわからないところが魅力。小動物の目」と語っていたように、何を考えてるかわからないアブない役をやったら、意外な怖さを醸し出すんじゃないかと思う。
渡部豪太の危険な演技は、ドラマにさまざまな新しい可能性を見せてくれた。渡部豪太の可能性とともに、今後も意外性のある俳優・女優の「アブない演技」をどんどん見てみたい。