『ショムニ2013』風の“寒い”演出で、『半沢』どころではない『リーガルハイ』
今回ツッコませていただくのは、10月9日にスタートした『リーガルハイ』(フジテレビ系)。
もともと前作が好評だったことに加え、夏の大ヒットドラマ『半沢直樹』(TBS系)の堺雅人が主演ということから、『半沢』の視聴者なども「新規」として多数取り込めるのではないかという期待がされていた。
しかも、半沢の決めゼリフ「やられたらやり返す」のパロディ「やられてなくてもやり返す」のセリフを入れてくる大胆不敵さも予告されたため、放送開始前に話題になり、間違いなくヒットするだろうと思われた。結果、初回視聴率は、関東地区で21.2%、関西地区で23.1%(ビデオリサーチ調べ)と好調な滑り出しである。
だが、見ながら、どうしても湧いてきてしまうのが「これ、ホントに『リーガルハイ』?」という疑問だった。新キャラがいろいろ出ているとはいえ、堺雅人と新垣結衣は出ているし、チャンネルも合っている。
でも、本来は大きなセールスポイントの1つであった「コネタ満載」「ギャグ満載」具合が、どうにも寒く感じられてならないのだ。また、主演・堺雅人の大袈裟なコメディ演技も、「あれ? こんな感じだったっけ?」という違和感があるし、第1話ゲストの松平健は単なる悪ふざけにしか見えない。
さらに、不思議なのは、前作『リーガル・ハイ』よりも、まったく別の、よく知っている何かに似ている気がすることだ。扉を開けた時、立った時などの「バーン!」という大きな音や、登場人物のキメ顔+キメポーズに加えられた大袈裟な効果音、終始賑やかに流れているBGMなど、何だろうとしばらく考えているうちに、わかった。
なんか『ショムニ2013』(フジテレビ系)にそっくりなのだ。とはいえ、スタッフなども違うはずなのに、『ショムニ2013』にそっくりって何!? 我ながら不思議な気がして調べてみると、同じく「ショムニ2013みたい」といった声がネット上で見られたことに、さらに驚いた。
脚本家の古沢良太は、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などでおなじみだが、原作を兼任した映画『キサラギ』の「密室系」など、セリフのやりとりを命とする作品を得意とする人のはず。なのに、やりとりがなぜか寒い。おそらく脚本は悪くないと思うのだが、それ以前に、「バーン!」「ジャーン!」「ジャジャーン!」みたいな大仰な効果音・BGMがジャマすぎて、内容に全然入り込めないのだ。
近年は『カーネーション』(NHK)の渡辺あや、『あまちゃん』(同)のクドカンなど、名作ドラマは「脚本家の手腕によるもの」というイメージを持たれがちだ。でも、もちろん脚本は相当大事だけれど、『カーネーション』や『あまちゃん』が素晴らしかったのは、素晴らしい「演出」あってこそ。本当に当たり前のことだけど、演出ってすごく大事なのだ。
主演・堺雅人ということで、視聴率40%超えの『半沢直樹』と比較されてしまうことから、放送開始前には「気の毒」という見方も一部であった。でも、『半沢』を過剰に意識したのは、視聴者ではなく、『リーガルハイ』のスタッフ側だった。「利用してやる」くらいの心意気だったのかもしれないが、自分の持ち味を忘れ、完全にスベり倒しているように見えてならない。
まだきっと少しは間に合うと思う。一度『半沢直樹』を完全に忘れて、初心に、1期の制作スタイルに帰ってみてはどうでしょう?
(田幸和歌子)