「婦人公論」の勝ち組はバリキャリでも美魔女でもなく、“ピンピンコロリ”!
■きょうだいは金が絡むと他人より厄介
今号にはこんなページもあります、「溜息特集 きょうだいは敵か味方か」。“溜息特集”というものを、筆者は初めて目にしました。確かにきょうだい問題は溜息しか出ないことが多いですよね。親への愛憎とは種類の違う確執は、どんなきょうだいにも多かれ少なかれ存在するのではないでしょうか。特に成長しそれぞれ所帯を持つようになると、単なるきょうだいゲンカがシャレにならないほどこじれたり。
元・モーニング娘。の後藤真希の弟として知られる後藤祐樹のインタビュー「『ゴマキの弟』と呼ばれた僕が罪を犯して失ったもの」や、本特集外ですがいろいろお騒がせの今井メロによる「今、決意の再出発 もう生活保護は受けません」など、有名人きょうだいならではの愛情と嫉妬に苦しむ様子が赤裸々に語られております。
その点、昨年7月に再結成を決意した狩人による兄弟対談「本番直前、楽屋で大ゲンカ!お互いに甘えていたね」での、兄弟不仲でそろばん弾いちゃう昭和タレントのしぶとさ! そりゃ『夜はヒッパレ』がなくてもやっていけるわけです。
先ほども申し上げた通り、きょうだいの難しさはそれぞれが家族を持ってからが本番。この特集の中で最も溜息がこぼれた「ルポ 夫の実家の大ドンデン! “あて”が外れた妻たちの嘆き」を見てみましょう。「いずれは全部あなたのものになる」と言われ、繊維工場の跡取り長男の嫁として35年がんばってきたものの、浮気夫とワガママ義妹に振り回され最終的に無一文で離婚した妻(72歳)。すべての元凶である姑の口癖「金平糖の角を取って丸くなれ。いずれこの家のものは、みんなあなたのもの。角を立ててどうするの」がリアル過ぎて震えます。
苦労するのは長男の嫁ばかりではありません。銀行勤めの次男と結婚した生け花講師の妻(65歳)の場合、家を継ぐはずだった長男が宗教にのめり込み、次男である夫が突然「銀行を辞めて農家を継ぐ」と言い出して、さあ大変。「あの長男と変わり身の早い夫のせいで、私の人生、目茶苦茶ですよ」とポツリ。
そのほか、同居する姑の介護を「長男の嫁」として役目を果たし無事見送ったのもつかの間、夫が急逝。すぐさま夫のきょうだいたちから立ち退きを求められたという妻(54歳)など、夫とそのきょうだいに翻弄される嫁たちが続々登場しその辛い胸の内を吐露していました。
きょうだいの理不尽さと同時に、「嫁」という立場の無力さを痛感させられたこの特集。本当に溜息ものですね……。これが昔々のお話かと言えばそうではなく、現代の話。私たちにできることといえば、「兄弟は他人の始まり」と心得、過度な期待はしない、大事なことは文書化して残す、くらいでしょうか。つらい経験を共有し次の世代への知恵として伝えていく、「婦人公論」にはこうした役割もあるのですね。
(西澤千央)