“草食男子”の二の舞い? 「女の敵は女」を喧伝するおやじ週刊誌
イラスト:小野ほりでい
最近、おやじたちが「働く女」や「女の出産」についてうるさい。
前回とりあげた安藤美姫の出産についてだけではない。安倍政権になってからは、「育休3年、赤ちゃんだっこし放題」「女性手帳」「不妊治療助成金の年齢制限」などが話題になった。現政権が少子化対策に関心を示すのはいいが、育休3年は多くの働く女性たちにとっては現実味のない話だし(そもそも大企業でなければそんな恩恵は受けられない)、「女性手帳」も大きなお世話だ。不妊治療の助成金の年齢制限はある程度は仕方ないかもしれないが、日本では高度な不妊治療は自費診療のため負担は大きい。年齢制限と同時に保険診療についても考えてほしかった。
さらに、申し合わせたように、おやじビジネス雑誌がこんな特集を組んだ。
「女性昇進バブル――我が社の救世主か 疫病神か」(「日経ビジネス」8月26日号、日経BP)
「職場のお荷物か? 戦力か? ワーキングマザー」(「週刊東洋経済」8月31日号、東洋経済新報社)
「職場、恋愛、結婚……女の脳と男の脳は、どこが違うか?」(「プレジデント」9月2日号、プレジデント社)
ビジネス誌3誌が、同時期に「女」をテーマにすることは、とても珍しいことである。しかも、この特集タイトルの悪意に満ちていることよ。
「救世主か 疫病神か」
「お荷物か? 戦力か?」
要するに、働く女や子供を産んだ女は、おやじにとっては、疫病神であり、お荷物であると言いたいわけである。あるいは「男とは脳が違うから、女は仕事に向かない」とも。
中を読めば、まともな記事もあるにはあるが(この中では東洋経済はましである)、女たちを応援しようという意図はあまり感じられない。
おやじたちは自分たちが行き詰まると、現実逃避をする。数年前はそれが、私が名付けた「草食男子」をはじめとする若者に向かった。もともとはバブル世代の女でもある私が、「いまどきの若者は上の世代の男たちよりも、付き合いやすい」というほめ言葉の意味で名付けたのだが、いつのまにか「恋愛しない、消費しない、内向きで消極的な若者」という意味で流行してしまったのだ。
実際には今の若者が上の世代に比べて、恋愛や消費をしないわけではないし、内向きなわけではない。そして私はこの数年、何度もそう言ってきて書き続けているが、若者へのほめ言葉はなかなか聞いてはもらえず、ビジネス誌だけではなく、さまざまな媒体で「若者叩き」の特集が組まれてしまった。
しかし今の日本の状況が悪いというなら、それはどう考えても若者のせいではなくて、私たちバブル世代やその上の世代の責任だろう。しかしおやじはそれを認めたくないのだ。