コミケなんて目じゃない! 秋田県大曲「全国花火競技大会」の混乱と発狂
――「踊る阿呆に見る阿呆、同じアホなら踊らにゃ損々」と言うけれど、どうせ同じなら「見るだけ」の方がだんぜん楽でしょ! ということで、日本中、いえ世界中の「変な大会」をナナメ切り。参加者、観客まで余すことなくウォッチング。
今年も盛大に行われた、秋田県・大曲の花火、「全国花火競技大会」。テレビやニュース、もしくは現地でご覧になった方もいるだろう。その歴史はなんと明治43年(1910)に始まり、今年2013年には87回目を数える。通常の花火「大会」とは異なり、各花火メーカーが自身の持つ技を競い合う「競技」大会であるため、とにかく作り手の気合の入れようが違うのだ。競技は、現在はここだけになった「昼花火」、花火の丸さなどを競う、いわゆる規定の「10号割物」、音楽に乗せて音と光で魅せる「創造花火」の部がある。全国から集まった28社による腕の見せ合いは、昼の部から休みを入れつつも3時間以上ドッカンドッカンと上がり続ける。見られる花火のスケールが違うのだ。
そんな大曲の花火大会に、実際に参戦してきた。しかしここで言いたいのは、花火の美しさとかではなく、競技会に向けての「秋田全土の発狂ぶり」である。
まずすごいのは、人口4万人の穏やかな町に、一晩限りで80万もの人間が押し寄せるのだ。なんとなくすごいことは、数字に弱い人でもわかると思うが、それにしても尋常ならざる数である。混雑で有名なコミケですら3日間で60万弱。福井県の人口がだいたい80万人らしいので、1つの県がからっぽになるくらいの人出があるのだ。もうなんのミステリーだか、松本清張もびっくりだ。
例えるならば、家族4人の住む家に、突然80人の人がやって来た感じ。当然、家の中に泊まれる人などそうそういなくて、要はその近隣に宿を探すことになる。開催日当日の宿は、アクセスのいいところから順番に埋まって、秋田全土でほぼ満杯。隣県の岩手はもちろん、新幹線+JRで2時間はかかる一ノ関までもが射程圏内、盛岡のホテルなど当然満杯だ。当日、大曲周辺はじわじわと範囲を広げながら車両通行禁止となり、JRは臨時便を出しまくって、この80万人をさばくのである。それでも、3分に1本電車がやってくる都内とは条件がまったく違う。盛岡から秋田まで走る秋田新幹線はなんと単線で、在来線と線路を分かち合っているのである。要は3分ごとに臨時便を出そうにも、それははなからできない相談なのだ。