「SEXにはとても臆病だった」ジャニーズ時代の田原俊彦の“危険”な1冊
田原俊彦=トシちゃんの、いわゆる“ビッグ発言”は1994年のことだ。当時のマスコミからのバッシングは相当なものだった。しかし、そもそもトシちゃんはこの“ビッグマウス”ぶりがアイドルとしてのウリでもあった。多分その発言時も、トシちゃん的には「通常営業」だったのだろう。
考えてみれば、オードリーの春日やスギちゃんあたりが言ってるネタと実は大差なさそうに思える。それがわかるのは、ビッグ発言より8年前、『教師びんびん物語』(フジテレビ系)の放送前年、すでに大人気状態にあった86年に出た自伝的エッセイ『とびッきり危険(デンジャー)』(集英社)。このエッセイでもトシちゃんはブレることなく、随所に“ビッグマウス”なノリを出している。
ニューヨークに行けば、<どうしてこの街はオレに反応しないんだ、アッタマにくるよ(中略)田原俊彦だぜ、オレは!>、幼稚園時代の「お遊戯会」の思い出を語れば、<ステージに立つと、すぐ目立っちゃうという性格は生まれつきというわけ>、アイドルになれば、<歌謡大賞の新人賞、レコ大の最優秀新人賞、紅白歌合戦出場、出す曲出す曲、すべてヒットチャート初登場第1位……。こんなボクに誰が何を望むのだろうか>と、「なんだかパネェッス、トシちゃんさん」と思わず太鼓持ちの気分になってしまう。そして、<ボクもみんなのおかげで少しビッグになった物だと思う>と、やっぱり“ビッグ”と言っている。
さて、この手のタレントエッセイでのお約束といえば、「時効」になった若き日のやんちゃぶりの告白だ。トシちゃんの告白はタバコから。中学生時代に吸った経験を振り返り、<タバコぐらい吸わなけりゃ、友達に何いわれるかわからなかったし、男としてのメンツもあったし>といい、飲酒についても<こんなこと誰でも男なら経験しているから>とまとめ、さらに<ひそかに賭け麻雀なんかもやってたし>とあっけらかんと語る。このくだりを若いJr.がもし読んで、「トシちゃん先輩、かっけぇ!」と思ってしまったら大変だ。未成年喫煙、飲酒、賭け麻雀をしていたなんて、現在ではあり得ない告白だが、この本はちゃんと「協力/ジャニーズ事務所」とクレジットされている公式本。時代を感じる。
■恋愛話が生々しすぎる
<“淡いピンク色の思い出”を書いてみようと思う>と、サラリと女性についての思い出も語り出す。ここがまた、名フレーズの宝庫だった。小学4年生の時に初恋の「浩美ちゃん」のほっぺにキスをしたトシちゃん。その瞬間を振り返り、<浩美ちゃんをつかまえると黒板に押し付けて、チュッチュ、チュッチュ、まるでドラキュラ>……「ドラキュラ」という例えはどうなんだ。そして、得意げにこんなことを語っている。
<“エッチなボク”は学校じゅうで有名になった>
<みんなどんなにワルぶっても、エッチなことに関しては“都会派”のボクにはかなわなかった>
「都会派」ときた。そのほかにも、身体測定の時の「のぞき体験」や、お医者さんごっこなど、幼い頃の可愛げある体験をたっぷり語った後にこんなことを言う。
<こんなに早熟なボクでも、SEXに対してはとても臆病だった>
スゴいフレーズがきた。さっきも書いたが、「協力/ジャニーズ事務所」である。「『an・an』(マガジンハウス)並に語っちゃうのか?」とドキドキしながら読み進めていくと、
<中学を卒業したのをきっかけに、ボクは思いきって愛の行動に出た>
高校時代に、2人で映画を見たりするようになった相手の家に行ったトシちゃん。
<オレンジ色の夕陽が束になって、斜めに彼女の家のまわりをさしていた>
<彼女の白い歯と半袖の清潔なブラウスに夕陽が当たって、とてもまぶしかった>
文章も笑いがなくなり、なんだかロマンチックになっていく。
<ボクは彼女の両肩を優しく押さえ、その赤い蕾のような唇に触れた。とてもいい匂いがしたよ>