新興宗教の闇

脱退者増加で神経質に? サイエントロジーがジョン・トラボルタを監視

2013/08/19 16:00
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「普通に振る舞っていた」ジョン・トラボルタが一番怖い

 『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977)で一世を風靡し、『ベイビー・トーク』(89)などのコメディ作品や『フェイス/オフ』(97)などの本格派アクション映画など、幅広いジャンルで活躍する俳優ジョン・トラボルタ。彼は、妻で女優のケリー・プレストンと共にサイエントロジーに心酔しており、09年に16歳だった長男が急死した時も「サイエントロジーに救われた」と公言。先月受けた、英大手新聞「ガーディアン」の取材でも、「サイエントロジーを心から愛しているんだ。38年間、信仰しているし、サイエントロジーなしでは今、自分はここにいないと断言できるよ。自分はこれまでたくさんのものを失い、たくさんのネガティブなことが身に降りかかってきた。でも、サイエントロジーのおかげで乗り越えられたんだ。サイエントロジーのセッションのおかげさ」と語り、強い信仰心が垣間見えた。

 ジョンが心酔するサイエントロジーは、「個人の精神性と能力と論理観を高め、より良い文明を築きあげる」と謳う宗教団体。「精神に関する疑問に対して、人間が初めて真の科学的方法を適用した」として、莫大な費用のかかる“オーディティング”と呼ばれるカウンセリング・セッションを受けさせるため、宗教というより自己啓発セミナー団体に近いともいわれている。また、世間離れしたことを延々と説いたり、非常識な規則を強いることから、危険なカルト団体だと報じられることも多い。

 サイエントロジーが「うさんくさい」といわれる理由は多くあるが、その1つに、積極的にセレブを勧誘し、広告塔として活動させることがある。教団の創始者L・ロン・ハバードは、「創造力に富む人々のために」とセレブリティー・センターを創設。「芸術家がサイエントロジーの原則を自分の活動分野に適用するのを手助けする、特別なサービスを提供する」と多くのセレブを勧誘してきた。トム・クルーズやジョン・トラボルタはセレブリティー・センターが誇る大物スター信者であり、彼らがビッグになったのも第一線で活躍し続けるのもサイエントロジーのおかげだと断言している。

 そんなサイエントロジーだが、ここ最近、脱退者が相次いでいる。サイエントロジーは、“教団の教義に基づいた薬物依存症の治療”でこれまで多くの薬物中毒者を救ってきたと豪語しているのだが、薬物依存の治療を行っている教団施設で不審な死を遂げた者が何人もいると大手メディアに報じられるようになったのだ。元信者による暴露本や、ケイティ・ホームズがサイエントロジーに耐えられなくなりトム・クルーズと離婚したという報道も、脱退者増加に拍車をかけた。また、ここ数年で脱退したセレブ信者の存在が大きいという説も強い。

 05年には、『ミリオンダラー・ベイビー』でアカデミー賞受賞作品賞経験を持つ脚本家ポール・ハギスが、35年間信仰してきたサイエントロジーを脱退。娘が同性愛者である彼は、教団が同性愛に対してネガティブな意見を持っていること、教団の重役たちから暴力を受けたことを脱退の理由だと告白し、大きな話題となった。ポールは「教団を去ったのは、自分自身が選んだ選択。私は信者たちにサイエントロジーを去れと勧めているわけではない」と明言したが、彼の告白がきっかけで脱退した人は多かったとみられている。


 12年には、母親の勧めで薬物依存を克服するために入団したリサ・マリー・プレスリーが、教団と決別したと報道された。同年5月にリリースしたアルバムの収録曲「You Ain’t Seen Nothin’ Yet」は、教団を辛烈に批判する曲だと話題になった。

 そして、今年7月。アメリカで大ヒットしたコメディ番組『The King of Queens』で国民的女優となったリー・レミニが、サイエントロジーを脱退したと発表。彼女が教団を去った理由はいくつかあるが、教団のトップ指導者デビッド・ミスキャベッジに妻シェリーの居場所を聞いたことで彼の怒りに触れ、以来、不当な扱いを受けるようになったことだと伝えられている。シェリーは「行動修正プログラム」が行われる「極秘の場所」に監禁されているとウワサされる、教団ではアンタッチャブルな存在なのだ。

 長年教団の広告塔を務めてきたリーがサイエントロジーを去ったことは大々的なニュースとなり、07年以降、姿が確認されていないシェリーの安否や教団の知られざる闇があらためてフォーカスされるようになった。リーはサイエントロジーからの報復に怯えているようだが、米ゴシップ芸能サイト「Showbiz Spy.com」は、元信者であるリサ・マリーがリーを支えていると報道。リサはイギリスの自宅からリーに電話をかけ、この騒動から逃れるために「うちに来なよ。イギリスにおいで」「私が支えるよ」と約束したそうで、美談として伝えられた。

『フェイス/オフ 特別版』