カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「DRESS」9月号

「アラフォーの出産はいいことずくめ」、「DRESS」が押し付ける救いなき妊娠出産論

2013/08/10 16:00

 具体的にその違いを見てみましょう。WEBコラムによると、「38歳と42歳では、妊娠の確率に大きな差がある」「妊娠のリミットは42歳」だそうですが、本誌企画では質問者の年齢に30代が多く、40代からの質問は2つだけ(2人とも42歳)。それも「産める身体でいるために気をつけることは?」「今妊娠を望んでいない場合ピルを飲んだ方がいいか?」といった、切実な悩みというより、単なる質問に留まっているため、宋先生からの辛辣な回答はありませんでした。40代の妊娠問題は、生活上で気をつけたり、ピルを飲んだりする程度の問題じゃないはずなんですよ。このあたりに、アラフォーの妊娠・出産を否定してはいけないという編集者の作為をとても感じてしまいます。

 そして本誌企画の後に続く「アラフォー妊娠の幸運と楽しさを知って欲しいです」という、雪野智世さんと宋美玄先生の対談。雪野さんは自然妊娠して44歳で初産、宋先生は35歳で母となったとか。この企画が、「DRESS」のアラフォー妊娠・出産観を決定づけています。

 「本当に子どもが欲しいなら、妊活は“今でしょ”」「アラフォー出産ははっきり言っていいことずくめです」と、幸運にも産めた2人からの妊娠賛辞的なキャプションがついています。そのおかげで、「教えて宋先生! アラフォー世代の妊娠問題」が、なおさら「アラフォーが妊娠出産するためのステップ」を紹介する企画として印象づけられるのです。

 妊娠、出産、そしてもちろんその後にやってくる育児の問題は、とてもデリケート。もうすでに不妊治療をトライし続けてあきらめた人もいるでしょうし、パートナーに不妊の問題がある人もいるかもしれません。若いうちには妊娠のチャンスがなかったのかもしれないし、経済的な問題かもしれません。けれどもこの企画は、「知らなかったでしょ、でも知っておいたら、妊娠できますから!」という一択なのです。すでに情報を持っていた人たち、もしくは自由な選択肢を持つことができなかった人には、なんの救いもない企画です。

 妊活をすること自体は、悪いことではありません。アラフォーになるとリスクが高まるからこそ、努力をしなければいけないでしょう。しかしその結果が「妊娠しました出産しました」だけでは不完全なのではないでしょうか。配慮が足りないと言わざるを得ません。一般的には、努力が報われない人の方が、圧倒的に多いはず。ならば、そういう状況になった時、どういう選択肢があるのか、どう乗り越えるかの方が、問題としては大きい気がします。創刊時から一貫している「やっほー! アラフォー楽しいよ!」のスタンスは、現実に目を背けてまでもとるべきでしょうか。

 さらにこの企画からは、女性の妊娠・出産に関する悩みが肥大する原因となる、「まだか」「産まないのか」という“周囲からのプレッシャー”にも似たものを感じるのです。それは、女性自身が一番よく知っていることのはずなのですが……。

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