子どもや親のことも話し合わない、やくみつる夫妻の「委ねられている」という着地点
結婚――それは独身時代に抱いていた“理想”を壊し合う作業から始まる、超現実的な「生活」の日々。まったく違う人生を歩んできた2人が“夫婦になる”ためには、どんな試練が待ち構えるの!? ぶっちゃけ結婚ってどうですか?
――やくさんと奥さんの出会いを教えてください。
やくみつる氏(以下、やく) 私が連載を持っていたマンガ誌上で、「親しくなってもいいという人」を募集しました。そこにカミさんから、熱い手紙が来たんです。熱いといっても女性として熱いのではなくて、野球に対する情熱が熱かった。1年近くは手紙だけのやりとりで、昭和61年のプロ野球の開幕戦を一緒に見に行くことになりました。
――交際が続き、平成3年に、やくさんが32歳、奥さんは30歳で結婚されます。結婚のきっかけは?
やく 私はその気はなかったんですが、カミさんが大相撲九州場所に行っている間に、あちらのお母さんに自宅に呼び出されまして、「娘はもう30だ。どうしてくれる?」と問われ、年貢の納め時かと。ただ、結婚しても子どもは作るまいと思ってました。
――それは、結婚前に奥さんと話し合われたんですか?
やく いや、私は言ってもいませんし、カミさんがいつ頃から、「こいつは子どもがいらないんだな」と認識したかはわからないですね。カミさんがどう整理をつけたかを話したこともない。もしかしたら、子どもが欲しかったのかもしれないですし。
――子どものことを話さないというのは、珍しいですね。
やく だから、そこを補って余りあるような“楽しい現実”を提供しなきゃいけないんですよね。いろんなところに連れて行って、海外も100カ国を達成しました。子どもがいたら、そうはいかんでしょ。
カミさんは結婚してから私に感化されて、相撲を好きになったんですね。ほかにも、少なくとも虫に対する興味は結婚前後に植えつけたと思います。今では相撲、虫、お笑い番組、歌謡曲などなど、見るもの、楽しむものはほとんど同じですね。一点だけ違うのは、納豆を食べるか食べないかぐらい。
――夫婦ゲンカになることは?
やく 気色ばむことは、ままありますが……。うちの場合は、客観的に考えても私の方が賢い! カミさんの意見が通ったことがあっただろうか、というぐらいです。すべて私が上から言いますから。
――トップダウンですか?
やく そりゃそうですよ、誰が食べさせているんですか? って話です。