Twitter発「BL短歌」、萌えを詠む腐女子が語る「ルールに縛られない関係性」の快感
――腐女子たちは、そういう男同士の関係性のどこに萌えるのでしょうか?
佐木 一般的な恋愛ルールでは語れない、規定外の関係性に、唯一無二の結びつきを感じるからです。例えば世の中の男女は、一定の恋愛ルールに乗っかって、恋人同士になるじゃないですか。まず、男性にも女性にも理想像というのがありますよね。男性は、イケメンで仕事ができて、収入も多いといった人が理想とされ、女性は、美人で優しくて、子ども好きで、料理がうまいといった人が理想とされる。その理想像が基準となり、飲み会で女性が「気が利くアピール」をすることがポイントアップと見なされたり。男女がそうやってお互いにポイントをつけ合って、「じゃあ付き合うよ」となるように思えるんです。
私は、この一連の流れが、すごく面倒くさいんです。確かに「この人に好かれたい」って思ったら、それなりの気遣いを見せるかもしれないけれど、女性誌が読者全員に向けて作った「モテマニュアル」通りに動くことに懐疑的だし、「そのマニュアルに沿えば、全員モテるの?」「男女の関係性に求められているのは、マニュアルに沿った人間であって、“私”じゃないじゃん」という違和感をずっと抱いていました。でもBLで描かれる男性同士は、「男だから」とか「女だから」というルールに縛られた関係性を結んでいないんです。でもこの関係性は、現実では難しい。だから、マンガやアニメの世界だけででも楽しみたいんです。
――腐女子じゃなくても、「女だったらこうこうあるべき」という圧力に違和感を抱いている女性は多いと思います。
佐木 ちなみに、腐女子の間で評価が高い漫画が『のだめカンタービレ』(講談社)。なぜなら、のだめちゃんと千秋先輩の関係性が非常にBL的だからです。のだめちゃんは千秋先輩に好かれるために「女らしくしなきゃ」とか「可愛くしなきゃ」とは思わず、部屋も汚いし、料理も全然できないし、千秋先輩にものすごく気持ち悪く迫ったり、匂いを嗅いだりもするんですよ(笑)。結局、そんなのだめちゃんの個性を千秋先輩が受け入れ、2人は両思いになるんですが、千秋先輩はのだめちゃんが「女らしいから」「可愛いから」好きなんじゃなくて、「のだめちゃんだから好き」なんですよね。そういう関係性が、すごくいいなと思います。
――とすると、BLは、それこそ一般的な恋愛ルールや、性別に求められる社会的規定から外れた関係性の最たるもののような気がしますね。
佐木 そうですね。突き詰めると、別に男同士でなくてもいいのかも(笑)。「女だから」「男だから」こうしなきゃという決まりごとがない関係性に萌えているわけですから。例えば「俺はボケ役が心地いいし、こいつがツッコミやってくれると楽しい」と、誰に決められたものでもなく、2人が自ら着地点を見つけられる関係性に、憧れているんです。