カルチャー
BL短歌『共有結晶』インタビュー

Twitter発「BL短歌」、萌えを詠む腐女子が語る「ルールに縛られない関係性」の快感

2013/08/03 18:00

――佐木さんをBLの世界に導いたキャラクターは誰だったんですか?

佐木 『封神演義』(集英社)の楊戩と太公望です。個人的に、ライバル同士のキャラには、ことさらドキドキしますね。常に相手を意識して「必ず次は勝つ!」と思いながら、一方で「でもアイツのこういうところはすごい」と認め合っている特別な関係性。「ライバル同士の2人が、もっと仲良くなったらどうなるのかな?」と妄想するのが楽しいんです。

 実生活でも、BLレーダーは敏感です(笑)! 例えば会社で、「おい」と声かけただけで「あ、昼ね」と通じ合ってランチに消えていく男性社員2人を見ると、「ハッ!」とします(笑)。腐女子は、こうした男性と男性の関係性に萌えてるんですよ。特に恋愛がからんでなくても、男ばかりのサークルとかスポーツチームといった「チーム男子」のホモソーシャルな関係性には大きな憧れがあります。この点こそ、自分の好きなキャラクターだけを見ていて、そのお相手の顔さえ描かれないことがある男性向けエロ漫画との大きな違いですよね。

――そのお話を聞くと、例えばジャニオタが「嵐5人がワイワイ仲良く騒いでるのを見ると、可愛い」と感じる心理の延長線上に、BLがあると解釈できますね。しかし、なぜ彼らの関係を恋愛にまで発展させたいと思うのでしょうか?

佐木 腐女子たちが、自分たちのフィールドに持ってきたいんじゃないかな、と思います。BL漫画などは、基本的に少女漫画の文法で描かれるものです。少女漫画は、恋愛などの心の機微や関係性を描くのに適した手法を独自に発展させてきたジャンル。そこに男性たちを置き、関係性を読み替えることで、自分たちのフィールドに持ち込むということかと。

 ホモソーシャルでは、女性は徹底的に外部に置かれますから、「私たち流に読み替えてやったぜ!」という気持ちで彼らを支配したいのかも。あと、ホモソーシャルって、もともと恋愛に似てますよね? 友情と恋愛ってそんなにはっきり分けられる感情ではないと思いますし。BLは、「もう1つの見方」を提示するものじゃないかな。「これは友情」「これは恋愛」って、何でも名前を付けて安心したいというのは、堪え性がなくて貧しい在り方だと思います。世界にはわかりやすい境界があるものの方が少ないでしょう。ファジーなものをそのまま受け入れて、いろいろな在り方、感じ方や解釈があるべきなのではないでしょうか。

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