サイゾーウーマンカルチャー女性誌レビュー被害者ぶりたい「婦人公論」読者 カルチャー [女性誌速攻レビュー]「婦人公論」8月7日号 被害者でいたいという自己愛が強い、「婦人公論」の嫁姑特集 2013/07/30 16:00 女性誌速攻レビュー婦人公論 しかしこのアンケートで重要なのは「言ってスッキリ」要素ではありません。「争いの火種は?」という質問で「子育て・教育法」に次いで多かったのは、なにを隠そう「夫」。さらに先ほどの「姑にこれだけは言いたい!」でも「子育て失敗しましたね」「あんな男、産まなければ私の不幸もなかった!」など“夫憎けりゃババアまで憎い”系のコメントが散見されました。読者体験手記も「マザコン夫が、すべてを悪くする」というストレートなタイトル。嫁姑問題においても、つまるところは「夫」。 興味深いのは「婦人公論」読者たちが、嫁姑問題においては常に“嫁”であることを望んでいるということです。それは一種の被害者意識にも近いのかもしれません。古い家制度に縛られる、かわいそうな私。それでも夫との関係さえうまくいっていれば、姑の嫌味もいじめも耐えられたかもしれない。だけど肝心の夫はマザコン、モラハラ、無関心ときたもんです。この「私は悪くない、私は被害者」という思考は、嫁から姑になっても引き継がれます。それでは「婦人公論世代~姑side~」を見てみましょう。 ■「いい姑」という都市伝説 「かわいそうな嫁」である「婦人公論」読者は、せめて自分は「いい姑」であろうと努力をします。姑座談会「息子を支配、呼び捨て、浮気もする コワ~い嫁に戦々恐々!」には、嫁と姑という矛盾した立場を背負わざるを得ない彼女たちの、複雑な心境がよく表れています。 そもそもコレ“腹立つ嫁”や“ムカつく嫁”ではなく“コワ~い嫁”という表現がポイントですよね。「私としてはフランクにお友達づきあいをしたいと思っていて、この間は、お嫁さんが新しいお洋服を着ていたから、『あら、おニューね』ってほめたんです。そしたら息子が、『嫁が気にするから余計なこと言うな』って。ほめただけなのに、これから何も言えなくなっちゃうわ」「さらに私が気に入っていた指輪をあげたことがあるんですが、お嫁さんは絶対につけないの。私のほうが、うんと傷ついてるわよ。(笑)」。こんなに笑っていない(笑)もないものですが、全編通してこんな感じ。この座談会から漏れ聞こえるのは“私は良かれと思って”“こんなにしてあげてるのに”“別にね、だからといって何かして欲しいわけじゃなくて”“ただ息子のため”……んも~はっきり言ったらイイのに! 「私たちの時代はそんなことしたら離婚されてたわよ!」「こんなに優しい姑に感謝したらどうなの!」って。 とキリキリしていたら、座談会の最後におっしゃってました。「結局、私たちっていい姑でいたいのよね。それなのに、嫁はいい嫁になろうなんて思っちゃいない」。“自分がされて嫌なことを、人にしない”それがどんなに難しいことか、苦悩が滲み出た座談会でした。冒頭のアンケートでは「もう『いいヨメ』でいようとは思いません!」と高らかに宣言していたのに、「いい姑」幻想からは逃れられない。どちらにしろ嫁の私も姑の私も「男(夫/息子)」との関係に大きく左右されていて、それがある限り、嫁と姑は1人の人間として相対することは難しいのだと痛感しました。 それでも多くの人はまだ1人の姑とやっていけばいいわけですが、世の中には見たことも会ったことも存在すら知らない“不特定多数の姑”と戦わなければならない女性もいます。 例えば今号に登場する「拝啓、雅子さま 私たちの心は揺らいでいます」や「安藤美姫 守るものができて生まれた強さ」などは、国民の名を借りた「自称:いい姑」たちが、自分たちの価値観に合わない嫁を「心配」という大義名分のもとに断罪したくてうずうずしているのがよくわかります。そしてそれは「婦人公論」世代だけが持っている特別な感覚ではなく、誰もが持つ身勝手な正義感。そう、あなたも私も嫌な嫁/姑。他人に首をつっこみたがり、そのくせ自分がされたら被害者ぶる。そう思っていれば、少しは気楽に、この嫁姑という“無限じゃんけん”を続けられるような気がします。 それでもなかなか「いい嫁/姑」願望から抜け出せないという方は、ぜひ「藤田紀子×花田倉実 “三度目の正直”で、やっと築けた良好な間柄!?」を。タヌキな嫁とタヌキな姑が、平成狸合戦ぽんぽこを繰り広げています。「やっぱり年齢が上である姑が思いやりを持って、広い心でお嫁さんを見てあげることよね(藤田)」「そんなお姑さんの思いやりに甘えてしまわずに、嫁の側も、お姑さんには常に尊敬の気持ちを持って接することが大切ですよね(花田)」などなど、女の腹鼓カーニバル!! 花田家がまさかのロールモデルに浮上した、やっぱりコワイ「婦人公論」真夏の嫁姑特集でした。 (西澤千央) 前のページ12 最終更新:2013/07/30 17:14 Amazon 「婦人公論」 被害者ヅラした加害者がどれだけ多いか! 関連記事 「婦人公論」ならではの円熟味、夫婦問題は解決しないことこそ生きる知恵モラハラされた妻の欲望は娘へ……「婦人公論」西川史子母の闇自分探しより墓探しをしろ!? 「婦人公論」が説く“理想の最期”とは女から自由になったババアたちが、「婦人公論」で説く幸せな生き方「婦人公論」のルポで露見した、“事件を消費したい”という世論の強さ 次の記事 キナ臭すぎる『新撰組記念館』 >