カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「リンネル」8月号

梅仕事&トイレ用ホーロー鍋、不要にコンプクレックスを刺激される「リンネル」生活

2013/07/17 19:30

 そして、行き着くところは、同企画内の「みんなの梅仕事」というページです。「梅仕事」とは、梅を使った保存食の仕込みを行うこと。ここでは、梅の塩漬け、梅ジャム、梅シロップなどのレシピを紹介しています。梅仕事ですよ、梅仕事。この言葉に漂う季節感、手仕事感、スローライフ感、ナチュラル感、晴耕雨読感、ほっこり感、ゆったり感。すなわち、狭い部屋で1日何時間もパソコンに向かって一歩も外に出ない日もあるような女には決して手に入れられないもの、それが梅仕事なんです。うらやましい。うらやましいけれども、仮に魔法使いに「オマエを仕事がデキる女か、梅仕事がデキる女か、どちらかに変身させてやるぞ」と言われたら、迷わず「仕事がデキる女」を選ぶでしょう。仕事>梅仕事と思っているわけじゃないんです。むしろ梅仕事を選ばなかった自分が憎くて仕方がない。しかし、選ばない。どんなに憧れても絶対に手に入れることができないもの、それが梅仕事。「リンネル」が言うところの「大人」って、それが当たり前のように気負わずにできる女性のことなんだろうなあと思うわけです。

■リンネル女子のトイレ、ぱねぇ

 さらに、憧れてしまうページが、「石井佳苗さんのインテリア練習帖 vol.3 ~心地よいトイレ&サニタリーを作ろう~」です。トイレに洋書を飾ったり、DM(と言いながらおしゃれなハガキ。こんなDM見たことないです)を飾ったり、小ぶりのトランクをユーティリティ台代わりに使ったりしています。当然トイレブラシもホームセンターで買ってきたものではありません。気に入ったジャグ(水差し)5,250円やジョウロ3,675円にブラシを差すという、ブラシの用途を根本から問いただしたくなるような素敵なアイデアを紹介しているんです! このブラシ、何に使うんでしたっけ? 確か便器を洗う用途だったような……。さらに、ごみ箱(要するに汚物入れ)には、ふたの付いたホーロー鍋9,450円を使っています。使用済みナプキン入れに鍋!? しかも9,450円!? いやいやいや、単なる価格だけの話ではありません。トイレにここまで意識を傾けられるかっちゅー話ですよ。トイレには神様がおるんやで、ですけれども!

 「おしゃれを手作り」という連載ページでは、「バッグとしても使えるポーチ」の作り方を紹介しています。これだけ毎月毎月バッグやポーチを付録として押し込んでいながら、さらにポーチを手作りしてしまうという非合理、不条理。「リンネル」言うところの「大人」とは退職老人のことかと疑いたくなるほどの悠々自適っぷりです。そんな時間ねーし、マジそんなヒマじゃねーし、と思ったあなた、よーく自分の生活と性格を考えてみてください。時間があったらこの生活しますか? 梅仕事します? 汚物入れを自由が丘のキッチン雑貨店で探します? 年間12個袋モノが付いてくるのに、ポーチを手作りします? 筆者はしません。時間があったらするという人は、時間がなくてもするんです。必要があればする。しないのは、きっと「必要ない」と思っているから。

 ……でも、必要ないと思っているはずなのに、頭のどこかで自分が「決定的に何か欠けてる」ように思ってしまうんですよ。この埋められない空虚感ってなんなんでしょうね。梅仕事コンプレックスとでもいいましょうか。一生、克服できそうにありません。
(亀井百合子)

最終更新:2013/07/18 20:09
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