カルチャー
『シェアハウス わたしたちが他人と住む理由』著者インタビュー(後編)

「仕事と育児の両立は無理」シェアハウスが生んだ、20代女性の結婚・育児・老後

2013/07/14 18:00

――今、都心部では、働きたくても保育園が子どもを預かってくれないというママたちがデモを行ったりしていますが。

阿部 私たちの世代って、社会への期待が薄いのではと思うんです。「政府が何をやっても不景気」という中でずっと育ってきたから、デモをやるんだったら、自分たちでどうにかしなきゃなと思います。コミュニティも誰かが作ってくれるものじゃないから、自分たちで作ってくしかない。

茂原 今の20代女性は、60歳、70歳まで働き続けることが社会から求められているものの、キャリアモデルも少なく、自分の理想像が描けないまま「大変そうだな」と思ってるのではないでしょうか。だからこそ、周りの人と協力をして、新しい形を作っていければいいと思います。

――周りと協力するというのは、つまり「町内会」的なものを想像すればよいのでしょうか?

阿部 確かに昔は、住んでいる土地土地で町内会が機能していたし、そういう助け合えるコミュニティがありましたが、今それを機能させるのは難しいでしょう。

茂原 町内会などの「20世紀型ムラ社会」は、息苦しさがありました。例えば、私の祖母の田舎では、「どこどこさんちの娘さんの旦那の実家は~」なんて話を、町内の人がみんな知ってるんです。そういうウェットすぎる関係性と、かつ、その土地から出られないという息苦しさゆえに、核家族が増加したのかなと。でも、核家族だけで暮らしていくことへの限界が来てしまった今、「21世紀型ムラ社会」は、他者とゆるやかなつながりを持つことが必要なんだと思います。

阿部 例えば、日本でもすでにコレクティブハウス(※シェアハウスと違い、個々の家族の生活空間はマンションのように区切られて、キッチンやダイニングなどの共有空間を持つ。また、家事の一部をシェアし、週2~3回夕食を共同で作って一緒に食べている)があります。そこには、夫婦もいれば子持ちの家族、シニアの方も一緒に暮らしている。コレクティブハウスという箱ありきという点では、町内会に似ているともいえますが、そこでの暮らし方に共感できる人が住み、合わなかった場合は出ていってもいいというゆるやかさがあります。

 今後は、こうした箱ありきのものだけでなく、私たちのように自らシェアハウスを始めた世代が、新しいシェア生活の形を作っていければと思います。

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