[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」7月22日号

「婦人公論」ならではの円熟味、夫婦問題は解決しないことこそ生きる知恵

2013/07/13 16:00
fujinkouron20130722.jpg
「婦人公論」2013年7月22日号/中央公論新社

 今号の「婦人公論」(中央公論新社)、特集は「夫はなぜ、私をイラつかせるのか」です。「婦人公論」に登場する夫といえば、モラハラ、マザコン、浮気に経済DV、挙げ句の果てにセックスレスなど、「おもいッきり生電話」のみのさんであれば、「お嬢さん、別れちゃいなさいよ」と無責任に言い放つであろう産業廃棄物でおなじみ。今さら「なぜ」を突きつけることこそ、なぜ? まさか解決方法を模索し、夫婦として和解の道を歩もうとしているとか……? 愚痴や不満は垂れ流せど、だからといって特に行動は起こさない。問題先送りガールズである「婦人公論」読者が、自分たちのイライラ更年期の元凶である「夫」という生き物に向かい合い、見えてくるものとは一体なんなのでしょうか。

<トピックス>
◎一緒にいるのが恥ずかしい 妻は冷ややかに見ている! ダンナ生態図鑑
◎渡辺えり×柴門ふみ 変わってしまったのは夫なのか、それとも
◎ねじめ正一×高橋秀実 邪魔者と言われるうちが花 無視されるのが一番堪えるんだよ

■オカリナ女子という新形態

 「なぜそんなに上から目線? なぜ人の話を聞かないの? そしてなぜ食事の仕方もトイレの使い方も汚いの? いっこうに直そうとしない、その図々しさにも腹が立つ……」、「婦人公論」の特集のリードは毎号名文ぞろいですが、今号も痺れます。

 まず冒頭に登場するのは「一緒にいるのが恥ずかしい 妻は冷ややかに見ている! ダンナ生態図鑑」。読者から募った“ダンナあるある”てんこ盛り。コレがやりたいがための特集じゃないかというくらいノリノリです。回答者の平均年齢51.4歳、夫の平均年齢54.1歳、結婚年数平均24.5年。専業主婦と有職者(パートタイム/フルタイム)はおよそ半々。おそらくこれが「婦人公論」読者の平均的な“顔”なのでしょう。およそ80%の妻が「人の話を聞かない」「偉そう」「デリカシーがない」などの夫の不満を結婚直後から抱えていたといいますから、ここに出てくる夫うんざりエピソードは25年かけてイイ具合に発酵されたものばかり。


 「『ぱなし』のオンパレード。脱ぎっぱなし。開けっぱなし。つけっぱなし(40歳・会社員)」はどこの家庭でもありそうですが、「体臭を犬のせいにする(37歳・主婦)」「足の爪を切ってはにおいを嗅いで、口に入れてカミカミ(56歳・パート)」「リビングでポーズをとる。しかも全裸(48歳・パート)」はもうその家が長年かけて醸し出している“体臭”といった風情です。

 うんざり夫に対する「私の仕返し、憂さ晴らし」もまたオリジナル。「夫の車に傷をつける(38歳・主婦)」「自分だけおいしいものを、夫には賞味期限切れのものを(37歳・主婦)」といったかわいらしいものから、「話さない、世話しない、何もしない(51歳・パート)」「倒れても救急車はすぐ呼ばない(70歳・日本舞踊師範)」などガチに氷点下のものまでさまざま。筆者が最もグッときたのは「オカリナを吹く(68歳・牛乳販売業)」。夫への不満をのせて響き渡るシルクロードのテーマ……ご近所で「○○さんがオカリナ吹き出したわ!」「大変! 子どもたちを家の中に入れなきゃ」みたいなやり取りが繰り広げられているかもしれません。

 “夫婦”という世にも奇妙な共同体が生み出したこれらのやり取りは、まるで前衛芸術作品のような奇抜なオリジナリティを放ちながら、「あるある」「わかる~」と共感も呼ぶから不思議です。中年女がオカリナに辿り着くまでの経緯を考えただけで、頬に熱いものが伝うってもんですよ。

『婦人公論』