女としての自分を封じ込めた「不妊」という現実――彼女が婚外恋愛に走った理由
「心のどこかで『私は女として欠陥品だ』と感じるようになりました。そんな風に考えているから、当然セックスをしても気持ちいいわけがない。その頃からですね、当時恋人だった主人が、身体を求めるよりも積極的に外へ連れ出してくれるようになったのは」
美沙子さんのありのままを受け入れてくれたご主人。「彼しかいない」と、美沙子さんは感じていた。しかし、そんな穏やかで恋人同士のような夫婦生活に波紋が生じたのは、美沙子さんの勤める会社に中途採用で直之さんが入ってきてからだ。直之さんは、長身で細身のクールな印象。営業成績も良く、フランクに立ち回る彼は、入社後すぐに評判の的となった。地方局のアナウンサー出身の美人妻を持ち、内勤の時には常に愛妻弁当持参。公私ともに非の打ちどころのない存在だった。
直之さんと美沙子さんは、同い年ということもありすぐに打ち解けたという。しかし直之さんを男として意識をすることはなかった。彼女の無関心さが直之さんのハンター心を奮い立たせたのだろう。会社の飲み会の2次会で、2人きりになった時、美沙子さんは、「じゃ、(ホテルへ)行くよ」と直之さんから強引なアプローチを受けた。そして、誘われるがままにホテルへと足を踏み入れてしまう。直之さんのセックスは、クールな印象とは真逆の、激しく優しいセックスだったという。
「緊張と、子どもが産めないというトラウマでなかなか濡れない私を導くように、時間をかけて全身を舌で愛撫してくれました……気が付いたら、恥ずかしいほど濡れてました。主人とのセックスではあり得ないくらい」
恥ずかしそうに目を細めて語る美沙子さんの表情は、「恋する乙女」そのものだった。美沙子さんの中に芽生えた「抱かれたい」という思い。それは、今まで封印し続けていた感情だった。
■嫉妬心を与えてくれたことへの感謝
それからの美沙子さんは、直之さんが決めたルールの下で、もう4年間も直之さんとの恋愛関係を続けている。「会社ではプライベートな会話(連絡)をしない」「お互いの家庭は大事にし、干渉しない」……等々。第三者の私から見ると、徹底した「身体だけの関係」を貫くためのルールに思えてしまう。
しかし、美沙子さんはこのルールに納得しているようだ。ご主人と直之さんの存在は、美沙子さんのそれぞれまったく異なる部分を満たしてくれる。ご主人は、1人の人格としての“妻”を守ってくれ、直之さんは彼女の中に潜在している“女”を引き出してくれる。2人をうまく両立することによって、美沙子さんの欲望の均衡は保たれているのかもしれない。が、不倫は現実社会では許されることではない。仮に、直之さんの存在がご主人にバレてしまったら、美沙子さんはどうするのだろう?