「an・an」華やかな女子旅特集に垣間見た、「給湯室での悪口大会」っぽさ
■男と行かないのか、男と行けないのか?
やはり旅行は、「誰と行くか」で大きく変わるもの。どんな旅の形が取り上げられているかで、雑誌の読者層もわかるものです。
今回の「an・an」は「女子旅」がテーマですが、そのゴリ押しっぷりは目を見張るほど。巻頭の原田マハのエッセイから「旅先で心おきなく自分を解放できるいちばんの相手は、気の合う女友だちだ」と始まり、真木よう子のインタビューでは「一人旅は、私には無理。ホテルにお化けが出たら怖いから…(笑)一番楽しいのは、女友達との旅行ですね」。特集の1つ「極上のビューティ・ステイ」のリード文には「女同士の旅の醍醐味は、一緒にキレイになれること」とあります。とことん「女同士」を強調する誌面。
……そう、今回の特集には、まっっっったく男の影がありません。例えば、旅の途中で起こったトラブルを紹介している「私を襲った珍ハプニング」のコーナーには、「一緒に行った友達がパリのビーチボーイとしけこんで朝帰り」「友達に気を使っておならをしてなかったせいで凄まじい腹痛」「友達の頭からイモリが出てきた」エトセトラエトセトラ、判で押したように「友達」の文字が並びます。男の存在を匂わせているのは、「好きな人にフラれたショックで東京に一人旅」くらいの徹底ぶりです。
かといって、「秘境、行ってきます!」や「一人旅、サイッコー!」は一切ナシ。むしろバーベキューなど、「みんなでワイワイ!」の方が推されています。この構成からは、「1人で行動するのは、友達も彼氏もいない女!」思想を感じます。どんなに「一人○○」が一般化してきているように見えても、「女1人でラーメン食べるとか、ありえない!」という価値観はいまだに強固。「1人で行動」=「女を捨てている!」と考える人はまだまだ存在します。「an・an」読者は、周囲の目や男ウケを捨てきれない。定期的に組まれる恋愛特集もその現れです。創刊当時は「自由で自立した女性像」というイメージがあった「an・an」の女性観とその読者は、今や一周して保守的になっています。
ところで、今回の女子旅特集を読む読者は、彼氏と旅行に「行かない」のか、それとも「行けない」のか。それは人によって違うでしょうが、後者へのフォローは次号がバッチリ担っています。次号特集「大人の恋の育て方」のキャッチは、「プライドと思い込みを捨てれば、あなたの恋は必ずかなう」。心強いなー。
(青柳美帆子)