「日経ウーマン」推奨、「じゅんこの魔法の絵本100リスト」なる狂気じみたノート
■富や名声への欲望を連ねた「夢ノート」
特集「書いてスッキリ☆ノート術」には、起業家・倉持淳子さんが登場し、夢を実現するノートの法則を教えてくれます。その方法とは、日々の目標を書きこむ手帳のほかに、「夢ノート」を作ること。倉持さんは年に1度自分の夢を100個一気に書き出して、それを無印良品のノートにビジュアル化して「じゅんこの魔法の絵本100リスト」という「夢ノート」を自作しているそう。タイトルのネーミングセンスも衝撃的ですが、ノートの中身も松下幸之助の写真がデカデカと貼られていたり、マスキングテープや雑誌の切り抜きによるデコレーションも絶妙にかわいくなかったりと、こちらの期待を裏切りません。
しかし、ケチをつけているだけでは申し訳ないので、倉持さんにあやかって筆者も100個夢を書き出してみました(35番目の夢が「字がきれいになる」だったので今月付録の美文字練習帳に着手しましたが、早々に挫折しました)。何も考えずに一気に書いたので、自分の深層心理がいろいろと垣間見えて興味深かったです。当然のことながら100個も夢を書き出せば、仕事絡みの夢が叶ったらプライベートの夢は叶わないという矛盾が生じたりもします。そういった自分の中にある相反する感情を自覚できるのも、手書きの魅力だとあらためて気づきました。
しかし、紙面で公開されている倉持さんの「夢ノート」からは、そういった内面の葛藤や、彼女独自の価値観といったものがまったく見えてこないのです。そこにあるのは「日本一講演料が高い講師になる」「エルメスの財布ゲット ウハウハ」「芥川賞受賞」「ほんまでっかTVに出る」「『日経ウーマン』大賞受賞」「CM出演」など、冨や名声への欲望ばかり。彼女がいくつもの夢を叶えてきたのはおそらく、ノート術のおかげではなく、その、ぶれない上昇志向ゆえなのではないでしょうか。
倉持さんの「夢ノート」は確かにダサく、内容も欲望むき出しで、見たくないものを無理に見せられたように感じます。しかし、冒頭にも書いた通り、「日経ウーマン」という女性誌自体が、ある1つの目標のためにがむしゃらに努力することを美徳とする雑誌なのです。社会的成功を得るために手段を選ばない倉持さんの「夢ノート」に、「日経ウーマン」イズムを如実に感じた今月号でした。
(早乙女ぐりこ)