RIKACO風ママが教えてくれた、“なるべき人が入るのが芸能界”
ほかのお母さんたちが事務所全体をキョロキョロと目で確認しながら「おずおず……」とパイプ椅子に浅く座っているのに対し、モデル体型ママはリラックスして座り首を傾け、社長と談笑を始めました。RIKACOっぽい！ どうやらこのモデル体型ママ自身もモデルをやっていて、子どもの同級生もこの事務所に所属し芸能活動をしているらしい。私や隣のおばあちゃんとは明らかに“畑”が違う……。目指す人は当然のように目指す世界なんですね……。こんなモデル体型のママに対して「子どもが働いたお金、ちゃんと貯蓄なさってるんでしょうねえ!?」とイヤミを含めた感情を持つこと自体がトンチンカン、ということを悟りました……。
■親たちの欲を削ぎ落す、ダンディ社長
オーディションはまず、説明ビデオを見せられるのですが、「芸能活動はお仕事ですが、どうか思い出作りとお考えください」とか「赤ちゃんの成長とともに、当社で思い出作りをしてください」とか、ナレーションが「思い出作り」を連呼するんです。
ビデオを見た後、社長自ら説明を開始。にこやかに「実際、働くのは子どもですので、あまり真剣になりすぎないで」ということを言っていました。芸能活動を始めると、カワイイ子とか、キレイな子とか、リアクションがとれる子とか、“答え”がハッキリしてる分、我が子をそれに近づけようと頑張ったりしてしまうことがあるんでしょうか。特に「お金」に関して期待をしたりすると親子関係がおかしくなってしまうから期待しないでほしい、という社長の思いが伝わるスピーチでした。
年会費や費用はほかの事務所と同じくらいかかるのですが、老舗事務所Sのようにロゴ入りTシャツ（強制ではないが1枚1,500円）をみんなで着てレッスンをしたりなどはなく、C・キッズに入ると、数カ月に1回のペースで写真撮影をしてくれるとのこと。写真館で何万円もかけて撮ることを考えれば、所属料が含まれているんだから、なんとなくおトクかなーという感じ。とにかく社長は「赤ちゃんのことを考えて、気楽に登録してほしい」と言っていました。
今まで潜入した事務所とぜんぜん違う！ 老舗Sは実直に芸能界の仕事を教えてくれるだろうし、ド派手なT・アカデミーは芸能界の華やかさを楽しめそう。C・キッズは2つと同じくらいのお金がかかって仕事という面ではほかの事務所よりも現実味がないけど、私は3つの中でどれかに入れと言われたら、C・キッズに入るだろうな。なぜかここにいるとホッコリするし、通ってもいいかなという気になってきます。スタッフもピリピリしてないし。
最後は写真撮影なんですが、「お母さんも一緒に撮った方が記念になるよ」と言われて、ぎこちなく笑って撮りました。写真はその場でプリントしてくれます。老舗Sの時も一緒に撮らされたんですが、「母親もタレントとして使える容姿かチェック」という名目だったので、猛烈に卑屈な笑顔だったと思います。撮った写真を見せてもくれなかったし……。C・キッズは「一緒に撮った方が楽しいから！」という理由。社長自らが楽しそうに撮ってくれて、その“ロリコン臭”を確認したのですが、「子どもを撮るのが好き」というより「人を撮るのが好き」な人なんだなと確信。そういう人に撮ってもらうのは楽しいんですよね。ほかのお母さんたちも、最初は緊張してたけど、最後はニコニコしていました。
さらに帰りは「お菓子セット」をくれます。「小学生向けに用意してるけど、赤ちゃんの場合はお母さんが食べちゃってください」と、お茶目に笑うダンディ社長。入ってたのは、うまい棒にチョコボールなどの素朴なお菓子。最終的には社長に抱かれたくなるという予想外な展開で、C・キッズオーディションは終了しました。後日、合格通知が届きましたが、老舗事務所SやT・アカデミーとは違い、ゴリ押し電話攻撃はありませんでした！
3つの事務所に潜入してみて思ったのは、「人生で唯一、無条件で『カワイイ』とすべてが許される赤ちゃん期を、容姿の『優劣』を重要視する世界で過ごすなんて、超もったいなくない!?」ということ。仕事までたどり着いたとしても、赤ちゃんだから大事な時に寝ちゃったり泣いたりコントロールできない場面があるだろうし、普段だったら湧くことのない「なんでちゃんとしてくれないの！」という不毛な怒りを我が子に対して持ってしまいそう。そんなことばっかり思って、さらに“アンチ子役”な気持ちが強まっちゃいました！
なのに、オーディションから半年もたった今、T・アカデミーから封書が！ 「第2次実技審査に合格しながらも、残念ながらご入学手続きできなかった方のために、入学資格認定期間を下記の日程まで延長いたします」と、2カ月後の日付が書いてありました。半年たったらまた延長されるんじゃないですか!? うちの子、「赤ちゃんモデル」として合格したのに小学生になるまで送られてきそうです！
（田房永子）