仕事と家庭の両立を「女性だからこその強み」と美化、「日経ウーマン」の欺瞞
■「私だってできたんだから!」が息苦しい
ありがちな特集の2つめは「ずっと私らしく働きたい! 一生モノの仕事術」です。「女性が活躍する会社Best100」や、「ずっと自分らしく働くために身につけるべきルール5」など、これまた何年も前から変化のなさそうなコンテンツがずらり。
「働き続ける女子のキャリアお悩み相談室」では読者のどん底体験が紹介されており、読んでいて深刻な気持ちになります。キャリアプランや雇用形態についての切実な悩みに、キャリアの専門家は「問題の本質を考えて」「気持ちの整理をしてみて」「不安の根本を探ろう」等々と、問題の本質を無視した回答を投げ返していました。働く女性のための雑誌なのだから、専門家の方々ももうちょっと親身になって相談に乗ってくれてもいいのではないでしょうか。
同じく「他人事」感がMAXだったのは「今、時代が求める女性リーダーとは?」というコーナーです。女性活用の研究者である河口真理子氏と昭和女子大教授の福沢恵子氏が、「変化の激しい時代だからこそ女性の視点や発想が必要になっている」「家事や育児と仕事を両立できる女性は同時に様々なことをやり遂げる力を持っています」「時代は調整型のリーダーを求めている。コミュニケーション能力が高い女性は、現場で求められる存在」などと語っています。この方たちはそうやって、今よりさらに女性の社会進出が厳しかった時代に、求められる女性像を演じつつ、努力と才能で自らの道を切り開いたのだと思いますが、「(私だってできたんだから)女性はみんなできるはず!」という先入観で、「デキる女性」像を打ち出されても正直困ります。
「日経ウーマン」が提唱していたのは、あくまで「自分らしく働き続ける」ことであったはず。それなのに夫や地域や企業の協力体制がしっかりしていないから、家庭と仕事を完璧に両方せざるを得なかったり、頑固なオジサンたちに囲まれて働いているから嫌々調整役をやらざるを得なかったりしたこれまでの女性たちの労苦を、「女性だからこその強み」という美辞麗句で読者にも強いてくるこのコーナーには、まったく納得がいきませんでした。
読者アンケートでは、9割以上の読者が定年まで働きたいと答えているにもかかわらず、「管理職になりたいですか?」という問いに、「YES」と回答しているのはたった18%です。この低い数字が、自分の努力や役職だけではどうにもならない、いまだ根強く残る女性の働きにくさを示していると思います。それなのに「働く女性にとってはチャンスの時代。物怖じせずに積極的に挑戦してみよう」なんて無理矢理背中を押されても、読者の逃げ場がなくなってしまうだけではないでしょうか。
■これぞ「日経ウーマン」のタイトルセンス
小特集「ハッピー文具大行進」では、先月号の「手作りグッズでバッグを個性的にアレンジ」に引き続き、「デスクのお悩みを文具でかわいく解決!」という手作りコーナーが。このコーナーでは、穴開けパンチの丸い紙屑を並べて水玉柄のセロテープを作ったり、ホチキスの芯に色を塗ったり、クリップにリボンを結わえ付けたり、「小学校の図工の時間か」と言いたくなるような文具アレンジがいくつも紹介されています。「次世代を担う女性リーダー」が仕事中この文具アレンジを必死にやってた驚きますよね。「日経ウーマン」はお願いだから手作りに凝るのはもうやめて!!
さらに驚愕したのは「誌上初!!WOMAN読者によるKYP総選挙」というコーナー。KYPって何? 空気読めないパソコン? と思いきや、「書きやすいペン」、略してKYPだそうです。特集名の「ハッピー文具、大行進♪」も含めて、そのタイトルセンスにふりきれないボケしか感じられない小特集でした。そのうち「日経ウーマン」誌上で、TPPに引っかけて「貯めテク・積み立て・プチ投資でTTP特集」とか組まれたりしないことを切に祈ります! 普通にありえそうで怖いです!
(早乙女ぐりこ)