カルチャー
『男の壁』刊行記念インタビュー【前編】

袋に埋め込んだ器具のボタンを押したらすぐ勃起!? 驚くべきアジアのED治療事情

2013/04/01 19:00
『男の壁』著者・工藤美代子氏

 「ED(勃起不全)」は、中高年の病気だと思ってはいないだろうか。日本におけるED患者数は1,130万人。原因は、大きく分けて「心因性(=精神的な問題)」と「器質性(=肉体的な問題)」の2種類があるが、特に心因性のEDは若年層にも珍しくないという。

 ノンフィクション作家の工藤美代子氏は、親友の不倫相手がEDになったことをきっかけに、ソウル、台湾、上海、北京、タイとアジア各地域のED事情を取材し、『男の壁 ED患者1130万人時代を生きる』(幻冬舎)を上梓した。EDの捉え方、治療法も各地域によってさまざまだが、それにまつわるセックス観もさまざまだ。自分に合った治療法を求めて海外に赴くということも可能になった昨今、自分が、あるいはパートナーがEDになった時、どうすればいいだろうか。著者の工藤氏にインタビューした。

――本書を読むと、近所の国、地域であっても、EDの捉え方が大きく違うので驚きました。

工藤美代子氏(以下、工藤) お国柄が出ていますね。日本では、30代男性でも「EDに悩んだことがある」という方はいらっしゃいますが、韓国で39歳のイケメンにインタビューしたところ、「周りにEDで悩んでいる人なんて1人もいません」と断言していました。考え方がマッチョなんですよね。韓国では、「男性は強くあらねばならない」というところがあるじゃないですか。韓流ドラマを見ててもそうですよね。その気質がよく出ていました。

 ところが、実際には韓国は、アジア各国の中でいちばん過激なED治療を実践しています。袋の中に器具を埋め込み、ボタンを押すと勃つようにする手術まである。しかも、お医者様は「韓国は、EDの研究ではアメリカと並んで先進国。悩んでいないでどんどんいらっしゃい」とおっしゃっていました。

――EDの遠因も、お国柄があるようです。

工藤 そうなんです。韓国は妻が教育ママ化するケースが多く、子どもの勉強のために母親が夜遅くまで起きていたり、子どもの欧米留学に母親が付いていってしまって別居、何年もセックスレスに陥るケースがあります。夫婦が久しぶりに会って、いざという時に、夫はED。夫婦の基本が壊れてしまっているんでしょう。子どもも大切ですが、夫婦関係が基盤にあってこそだと思いました。

――台湾は、社会や文化的背景が日本と似ていると言われていますが、いかかでしょうか。

工藤 台湾は明るくフレンドリー。女性同士で「主人がEDで……」と平気で話すそうです。日本では相当親しくても隠したがりますよね。台湾は製薬会社が中心となったグループが「EDは恥ずかしいことではないから治療を受けるように」と啓蒙するCMをテレビで流すなどの活動を行っています。その効果があるようです。

――日本でもある一時期、流れていたCMと同様のものですね。

工藤 このグループは、かつては日本や中国などアジア数国に窓口がありましたが、今は台湾だけが活動を続けています。そのため、1,000万人あたりのバイアグラの平均使用量は世界で最も高いんです。台湾の男性は、バイアグラをお守りのように持っているそうです。背景には、中国大陸に経済的にも政治的にものみ込まれそうな台湾の国際的な脆弱さも反映されているように思います。特に男性は精神的に不安なところがあるのかもしれません。

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